営業の構造化アプローチ(第8回)
第1回:営業の悩みは”構造×思考”で解決できる
第2回:営業の再現性が失われる理由
第3回:バラバラの営業を再現可能な型に変える方法
第4回:営業を構造化する意味
第5回:営業の構造化が失敗する3つの理由
第6回:営業ステージを分類する具体的な方法
第7回:営業プロセスの段階における必須アクションを網羅的に解説
第8回:営業プロセス6ステージの初期フェーズ(この記事)
第9回:営業プロセス6ステージの中盤フェーズ
第10回:営業プロセス6ステージの最終フェーズ
営業プロセスを構成する6つのステージのうち、最初の2ステージである「❶潜在顧客の探索(Prospecting)」と「❷見込み客への絞り込む(Qualifying)」について詳しく見ていきます。
❶ 潜在顧客の探索(Prospecting)
a. 公開情報等による抽出
b. コールドコール
c. イベント・外部ネットワークの活用
d. 他部署からの紹介
❷ 見込み客への絞り込む(Qualifying)
a.顧客の課題と潜在的ニーズの把握
b. 取得情報の分析、仮説の立案・検証
c. 潜在ニースに合致した商品の絞り込み
❶ 潜在顧客の探索(Prospecting)
a. 公開情報等による抽出
営業プロセスの最初のステージは、潜在顧客を見つけ出すことです。法人営業では、まったくの無から潜在顧客を洗い出すケースは多くありませんが、対象とする業界や業態を絞り込む場合は、母集団から事前に設定した基準に合致する企業を抽出する作業が必要になります。例えば、私の場合、法人向けに金融商品を販売する仕事ですので、金融法人や学校法人、年金基金や公的年金を母集団とし、総資産額や有価証券の保有額といった定量的な指標を基準に潜在顧客を特定していきます。
b. コールドコール
次のステップは、抽出した企業への直接のアプローチです。まったく面識のない相手に初回面談のアポイントメントを取る必要がありますが、もっとも原始的な方法が代表電話などに飛び込みの電話をする「コールドコール」です。ネット上にはコールドコールの「コツ」が数多く紹介されていますが、正直なところ成功率は高いとは言えません。自社ブランドが強ければ別ですが、知名度が高くない会社の場合、担当部署に到達するまでのハードルはかなり高いと言えるでしょう。
c. イベント・外部ネットワークの活用
もうひとつの手段は、イベントや外部ネットワークの活用です。業界団体などが開催するセミナーなどで名刺交換した相手に、後日接触する方法や、自社でセミナーを開催して接点をつくる方法もあります(自社開催のイベントの注意点は別記事でまとめる予定です)。または、LinkeInなどのビジネスSNSを活用するのも現代的なアプローチです。
d. 他部署からの紹介
さらに、既存の接点を活用する「リファラル(紹介)」も協力です。ここで言う「他部署」とは、自社の他部署でもあり、顧客企業の他部署でもあります。いずれにしても、すでに接触があるということは、自社に対して一定の信頼を得ている証左ですので、初回面談のハードルは大きく下がります。私自身の経験でも、成功率は明らかに高い方法です。
このステージで重要なのは、考えられる手段を広く洗い出し、より効果的なオプションを模索することです。どの方法、チャネルなら初回面談につながる確率が高いかを検証しながら、最適なアプローチを探っている段階と言えるでしょう。
❷ 見込み客への絞り込む(Qualifying)
初回面談に至った顧客の中から、今後のビジネスに発展する可能性が高い見込み顧客を選別するステージです。ここで営業担当者が陥りやすい典型的な失敗が、いきなり商品紹介に走ってしまう「カタログ営業」です。自社の商品一覧(ラインアップ)を提示し、相手が興味を示すものを探るという方法ですが、他の記事でも何度も書いている通り、これは顕在化したニーズを確認しているだけで、すでに競争は始まっている領域に後追いで参入しているにすぎません。
このステージで本当にやるべきことは、「顧客の課題と潜在的ニーズの把握」と「取得情報の分析、仮説の立案・検証」、そして最後に「潜在ニースに合致した商品の絞り込み」という一連のプロセスです。
a. 顧客の課題と潜在的ニーズの把握
営業プロセスの初期段階で最も重要なのが、顧客が抱える課題を推量することです。公開情報や初回面談で入手した情報をもとに、顧客の現状と課題を読み解き、その課題の解消法を考えていくことがメインになります。もちろん、相手企業の規模が大きくなるほど推察は困難になりますが、どれほどラフな推量であっても、この作業を省略することはできません。そのために、初回面談前の段階でも、公開情報をもとに業界構造や業界における顧客のポジション、過去数年分の業績やバランスシートの変化、役員の異動状況など、潜在的な課題を読む解くべく、できる限りの情報を把握しておく必要があります。以下は、私が金融商品を提案する際に、このステージで把握しておくべき顧客企業に関する情報の一例になります。

b. 取得情報の分析、仮説の立案・検証
直接であれ、公開情報からであれ、入手した情報を分析し、顧客の課題と解消方法を推察する、つまり仮説を立てます。それぞれの情報は入手した段階では単なる「点」にすぎませんので、それらをつなぎ合わせて線となるまで発展させるのが仮説の作業です。
例えば、特定の役員が異動になり外部から新役員が招聘された、という情報を得たとします。この事実だけでは何も語らないわけですが、それが他の情報と組み合わされることで初めて意味をもつことになります。
重要なのは、仮説を立てたら、次の面談でその仮説を補強するための情報を取りに行くことです。この作業を繰り返すことが、仮説の検証として重要であり、情報の精度は飛躍的に高まります。
顧客は「情報ばかり取られている」ことに抵抗反応を示すかもしれません。信頼を積み重ねながら高品質な情報を得るためには時間がかかるのは仕方がありません。それでも、すぐに商品提案に走るよりも、成功率は劇的に高くなります。
c. 潜在ニースに合致した商品の絞り込み
情報収集→仮説構築→更なる情報収集(検証)というサイクルを何度か繰り返した後にようやく自社商品との接点が見えてきます。この時点で初めて、提案すべき商品を絞り込むことができます。
営業の本質は、商品と顧客を結びつけることです。したがって、商品を構成するどの要素が、顧客のどの課題につながり、どう作用するのか、という要素間の接点を見極めることが大切です。これは、顧客が口にした商品ニーズをそのまま提案することとは、まったく次元の異なる作業です。これこそが「考え抜く営業」の面目躍如と言えるでしょう。
まとめ
業プロセスの最初の2ステージである 潜在顧客の探索(Prospecting) と 見込み客の絞り込み(Qualifying) は、単なる前準備ではなく、後続の提案・交渉・成約の質を決定づける“基礎工事”のような工程です。
Prospecting では、どのチャネルが初回面談につながるのかを広く検証しながら、最適なアプローチを模索することが求められます。 Qualifying では、すぐに商品紹介に走るのではなく、課題の推察 → 仮説構築 → 検証 のサイクルを幾度となく回し、顧客の潜在ニーズを構造的に理解することが不可欠です。
この2ステージを構造化して進めることで、提案の精度は大きく高まり、競争環境の中でも“周回遅れ”ではなく“主導権を握る営業”へと変わっていきます。 次回は、こうして見極めた見込み客に対して、どのように提案内容を設計していくのか──Proposal ステージ以降の実践的なポイントを解説していきます。


