営業構造化は机上の空論なのか|営業構造化に対する異論を再検討

営業の思考(コラム)


営業の構造化アプローチなんて、理想論に過ぎないのではないか?
このブログは2つのカテゴリーで構成されていますが、その一つである「営業の構造化アプローチ」では、営業プロセスを体系化・構造化し、再現性のある営業を実現するための知見や方法論について解説しています。

しかし、こうした方法論やアプローチに対しては、必ずと言って異論が出ます。私自身の経験においても、表立った反論こそ少ないものの、明らかに納得していない態度を示すケースも珍しくありません。

異論の代表例としては二つあります。

(異論❶)営業は生き物、構造化は理想論にすぎない

異論の一つは、「営業は生き物であり、体系化・構造化した営業は理想論に過ぎない」というものです。この異論の背景には、次の2つの考え方が潜んでいると考えます。

a. 営業担当者には相応の自由度が必要であり、構造化はその自由を制限する
b. 構造化は机上の空論にすぎない。現場はもっと複雑かつ流動的に動いている


どんなビジネスでも変化の激しい外部環境に晒されていれば、営業担当者には臨機応変な対応が求められます。このため、構造化という「型=フレームワーク」は、現実に即していない、あるいは、現実の複雑さを捉えきれないという疑念が背後にあるものと推察します。

別記事でも触れましたが、実際、構造化アプローチを営業組織に導入すると、プロセスの標準化などにより、相応の制約や作業負荷が発生することは避けられません。このため、特に経験豊富なシニア営業担当者ほど、構造化アプローチには抵抗感を示しがちです。確かに、現場感覚からすれば、一定の妥当性があります。


また、「机上の空論」という疑念についても、現場に近い人間ほど抱きやすい不満です。顧客の課題は千差万別であり、複雑な課題を解決するには、構造化という「型」は役に立たない、むしろ不要でしかないというものです。

これらの疑念を真っ向から否定するつもりはありません。しかし、営業パーソンには常にトレードオフがつきまとうものです。組織人である以上、組織営業の再現性を高めるという目的のためには、個人の裁量には一定の制限が設けられます。重要なのは、どちらか一方を選ぶことではなく、どのように両立させるかを理解することです。この視点は、優秀な営業パーソンの資質でもあります。

「型=フレームワーク」の下での自由とは、単なる裁量の拡大ではありません。自由を与えられるということは、思考の質を高めることを前提としているということです。思考の基盤が弱い営業パーソンに自由だけ与えられても、結果は火を見るより明らかです。自由は、思考の質が担保されて初めて機能します。

(異論❷)構造化より優先すべきことがある

異論のもう一つは、「営業プロセスを体系化・構造化する前に、もっとやるべき課題がある」というものです。組織運営には常時さまざまな課題や問題が山積しています。優先度の高いものから対処するという姿勢は当然であり、体系化・構造化は後回しにすべきだという主張にも一定の合理性があると考えられます。

ただし、この異論は「別の問題」が何であるかによって妥当性が代わります。例えば、組織の根幹にかかわる問題、例えばコンプライアンスの管理体制が整っていない、組織営業を成立させるためのリソースが不足している、または、営業成果よりも信頼回復が最優先である、といった状況においては、構造化の優先度が下がるのは当然です

一方、「構造化を理解できる人材が育っていない」、「目先の案件に対応に追われている」といった課題は、構造化アプローチの中で包摂可能な問題だと言えます。むしろ、こうした課題が存在するからこそ、構造化によって営業活動の再現性を高め、属人的な運営から脱却する必要性があるのです。

いずれにしても、組織が抱える課題を整理し、何が本質的な問題なのか、どの課題を優先すべきかを明確にしたうえで、構造化アプローチをどのタイミングで導入するかという計画を持つことが重要です。

まとめ

このブログで紹介している構造化アプローチは、私自身の長年の営業現場で試行錯誤し、実効性を確信している方法論です。決して、机上の空論ではありません。確かに、現実の世界は複雑であり、日々刻々と状況が変化していまし、構造化アプローチの理解と導入には一定の期間が必要になります。しかし、構造化アプローチという「型=フレームワーク」を意識して行う営業活動と、型を持たず営業パーソン個人の自由・裁量に任せた営業では、再現性や安定性といった面から大きな違いが生じることを、私は経験として理解しています。型を意識するだけで、営業活動は大きく変わります。

構造化アプローチは、現場の複雑さを捨象した机上の空論ではなく、むしろ、その複雑さを扱うために導入するものです。型の下での自由を許容する仕組みであり、営業組織が長期的に強くなるための土台といってよいでしょう。