営業プロセス6ステージの最終フェーズ|Closing と Retention を構造化する

営業の構造化アプローチ

営業の構造化アプローチ(第10回)


6つのステージで構成される営業プロセスのうち、最後の”詰め”となる「❺ 成約(Closing)」と、成約後の「関係構築」に位置する「❻ 関係維持・解約防止(Retention)」について、詳しく見ていきます。

❺ 成約(Closing

成約が決まった瞬間、営業担当者にとってはゴールであると同時に、新たなスタートになります。契約締結から納品までを滞りなく進めるため、営業担当者には「司令塔」として、社内を適切に差配する役割が求められます。商品組成のプロセスは一般的に「オンボーディング」と呼ばれますが、この工程をいかにスムーズに進められるかが、顧客満足度を大きく左右します。

a. 社内リソースの適切な活用
オンボーディングには複数の部署が関わります。営業担当者は、成約に至るまでの経緯や背景、顧客ニーズを漏れなく共有します。そして、各部署が部分最適に陥らないよう全体像を各関係者に示す必要があります。
他部署は複数案件を抱えているわけですから、自分の案件が常に優先されるわけではありません。このため、営業担当者は各部署での業務ひっ迫状況や業務負荷を把握しながら、必要に応じて顧客側とのスケジュール調整も行うことが求められます。

b. 外部委託先との緊密な連携
商品組成の一部を外部(グループ企業を含む)にアウトソースしているケースも少なくありません。この場合も営業担当者は、直接・間接を問わず、外部との連携を密にし、作業工程の進捗について責任をもって把握しておかねばなりません。社内外を跨いだプロジェクト管理能力が問われる場面です。

c. アフターサービスや定期報告内容の確認
アフターサービスの内容については、本来、商品の価格やフィーに影響しますので、提案段階で概要を把握すべき項目です。しかし、契約後には改めて詳細を詰め、顧客との認識齟齬を防ぐ必要があります。後から「これもお願いしたい」と要望が膨らむのは避けるべきです。可能であれば文書化し、双方の期待値を揃えておくことが重要です(期待値のコントロール)。

❻ 関係維持・解約防止(Retention)

営業の仕事というと、どうしても新規開拓から案件獲得という華やかなイメージが先行しがちですが、法人営業では関係維持のステージも同じか、それ以上に重要なものであることを理解されるべきです。
このステージの目的は、長期契約の基礎となる信頼関係を育て、トップアップやクロスセルなどの追加のビジネス機会を創出することにあります。短期的な成果ではなく、継続的かつ計画的なアプローチが不可欠です。

a. 関係構築・深耕
関係構築と一口に言っても、そのバリエーションは多岐にわたります。そもそも、法人営業、つまり企業対企業の付き合いになりますので、担当者同士の関係だけでなく、商品中心の関係性を超え、戦略的パートナーシップへ発展させるなど、企業単位での関係構築を模索していくことが必要です。

b. ダメージコントロール
私自身、営業担当者の主たる役割の一つと考えているのが、このダメージコントロールです。関係構築が深まっていく中でも、顧客が不満や懸念を一切抱かないことはほぼありません。営業担当者は、不満・懸念の原因となる潜在的な課題や問題を早期に発見しなければなりません。コミュニケーションを密にして、課題の背景にまで踏み込んで理解し、誠実かつ丁寧な対応をすることが求められます。この問題発見力については、多くの専門書が出版されているほどの重要なテーマです。

c. トップアップ・クロスセル
関係構築とダメージコントロールを土台に、これまで培った信頼関係をレバレッジ(活用)し、追加成約の確度を高めていきます。効率性だけ考えれば、新規顧客より既存顧客の方が成約確度は高いため、計画的に新たなビジネス機会を探っていくことが必要です。

まとめ

成約に至るまでのプロセスは「新規開拓(New Business Development)」と呼ばれますが、成約後から関係構築ステージでは一見、新規開拓とはまったく異なるスキルが求められているように見えます。しかし、本質的な部分は同じです。つまり、個別の課題から全体像へ、具体から抽象へ、短期視点から長期視点へ、と視点の切り替えを行いながら、それぞれの課題を深く考え抜くという「思考の質」が営業プロセス全体を貫く共通の基盤です。
このステージにおいても、全体調整、問題発見、期待値コントロールなど多面的な役割を営業担当者は担わねばなりません。この役割を十分に果たすためには、「思考の質」は必要不可欠なのです。