運用会社と一口に言っても、日系の資産運用会社(証券系・銀行系・保険系・独立系)や外資系運用会社があります。就職・転職を考える際、その実態の違いに悩む方は少なくありませんよね?
外資系への就職・転職というと、給料は高いけど、「土日・休日も働かされるでは?」、「海外とのコミュニケーションで英語が流暢に話せないと役に立たない?」と不安になったりします。何を隠そう、私も日系の運用会社から外資系に転職するときは、その不安で頭の中がいっぱいでした。
この記事でわかること
- 本記事では、日系の運用会社と外資系の運用会社の業務の違いや、人事・キャリア形成面での相違点を明らかにします
- 同じ「運用会社」や「アセットマネジメント」でも、日系運用会社では生い立ちが異なるうえ、外資系運用会社とは、ビジネスモデルの違いも明らかです
- これから資産運用会社に就職を希望している方や、日系の運用会社から外資系への転職を考えつつ悩んでいる方にとって、まずは仕入れておくべき情報をまとめました
この記事では、日系・外資系アセットマネジメントの双方で40年弱のキャリアを積んだ筆者が、両者の仕事内容や文化、キャリア形成の違いを徹底比較します。
ホームページや口コミサイトの表面的な情報だけでは絶対に掴めない、運用業界の「リアルな裏側」をわかりやすく解説します。
1. 運用会社の顔ぶれ
資産運用会社という業態は、テレビやウェブサイトの広告ではあまり目にすることがありません。しかし、日系だけでなく外資系の運用会社もたくさん進出しています。外資系といっても、米系、欧州系、英系、アジア系などいろいろあります。世界に冠たる超一流の運用会社から、ブティック系の中規模の運用会社まで多くが日本に進出しています。
代表的な運用会社(日系・外資系)を次に並べてみました。外資系の多くはグローバル企業が多いため、米系、欧州系などの分類は適切ではないかもしれませんが、便宜上、本社のある地域をもとに分けています。
日系運用会社
【証券系】
- 野村アセットマネジメント
- アモーヴァ・アセットマネジメント
- 大和アセットマネジメント
【銀行系】
- 三菱UFJアセットマネジメント
- アセットマネジメントOne
- 三井住友DSアセットマネジメント
- 三井住友トラストアセットマネジメント
【保険系】
- ニッセイアセットマネジメント
- 東京海上アセットマネジメント
- SOMPOアセットマネジメント
外資系運用会社
【米系】
- ブラックロック・ジャパン
- フィデリティ投信
- J.P.モルガン・アセット・マネジメント
- ゴールドマン・サックス・アセットマネジメント
- インベスコ・アセット・マネジメント
- ピムコ・ジャパン
【欧州系】
- シュローダー・インベストメント・マネジメント
- アムンディ・ジャパン
- UBSアセット・マネジメント
- BNPパリバ・アセットマネジメント
ご覧いただいてわかる通り、日系の運用会社でも、現在では「アセットマネジメント」という英語名称が付いています。これらは、設立からこうした名前だったのでしょうか?
2. 日系運用会社の特徴
まずは、日系運用会社について、設立の経緯、会社組織の概要、そして人事・キャリア面での特徴について解説していきます。
a. 設立の経緯
国内の日系運用会社は、歴史的に「証券系」が大きな割合を占めてきました。戦後の証券規制のもと、証券会社が自社で販売する投資信託を開発する「製造部門」として、次々と委託会社(子会社)を設立したのが始まりです。
大きな転換期となったのが、1990年代の「金融ビッグバン」です。つまり、規制緩和ですね。まず、それまで別々に業務を営んできた「投資信託委託会社」と「投資顧問会社」の兼業が解禁されました。さらに、外資系運用会社や、銀行や保険会社といった他業態からの相互参入が認められたのです。この結果、現在では、外資系や「銀行系」や「保険系」の運用会社も市場で強い存在感を放っています。
現場経験から(1)|アセットマネジメントへの改名
同じ企業グループで併存していた「投資信託委託会社」と「投資顧問会社」が合併した後の企業名は、「投信投資顧問会社」という、いかにも日本的な名称にした会社もある一方で、「アセットマネジメント」や「インベストメントマネジメント」といった英語名に変更した会社もありました。
いかにも日本的な会社名が、突然「〇〇アセットマネジメント株式会社」へと改名して、当時の私は、「かっこいい!」という印象を受けたのを覚えています。
b. 組織の概要
大手の外資系運用会社がグローバルな運用体制を敷くのに対し、日系運用会社の自社運用部門は、国内の株式や債券、および一部の資産クラスにとどまるケースが一般的です。ニューヨークやロンドンに自身の支店を構える大手企業や、親会社の現地法人が海外資産の運用を担う事例もありますが、運用オペレーションの中心は依然として国内にあるのが通常です。
では、海外の不動産やプライベートアセット、ヘッジファンドといった「オルタナティブ(代替)資産」の運用はどのようにして行われているのでしょうか。
これらのオルタナティブ資産に関しては、現地でのリソースや投資対象の発掘(ソーシング)において、日系単独では限界があります。そのため、海外資産やオルタナティブの分野で強みを持つ外資系運用会社と提携し、その商品を投資信託に組み込んだり、投資一任契約で顧客に提供したりするビジネスモデルが多く採用されています。
c. 人事・キャリア
人事面を見ると、かつては親会社(証券会社・銀行・保険会社)からの出向組や転籍組が組織の大半を占めていました。現在でも、部長・役員といった要職クラスには親会社出身者が多いのが実情です。しかし最近では、他社からの転職組(中途採用)や新卒採用の比率も確実に増えており、人材の多様化が進んでいます。
また、キャリアの流動性にも大きな変化が起きています。
これまでは「日系から外資系」への転職が一般的で、「外資系から日系」への転職はほとんど見られませんでした。その背景には、労働文化の違いだけでなく、明確な「給与水準の格差」があったからです。
しかし近年、日系運用会社もプロフェッショナル人材を確保するため、中途採用の給与水準を大幅に引き上げる動きを見せています。結果として、外資系から日系運用会社へ籍を移すケースもまだ少数ですが、珍しくなくなっており、日系の採用戦略はより積極的なものへとシフトしています。
3. 外資系運用会社の特徴
国内に進出している外資系運用会社の場合、運用そのものは海外本社やグローバル拠点で行うことが多く、日本法人の役割は、運用以外の業務が中心となります。
a. 主たる業務内容
国内に進出している外資系運用会社の場合、運用そのものは海外本社や世界各地のグローバル運用拠点で行われるケースが大半です。そのため、日本法人の役割は「自ら運用する」ことよりも、販売拠点としての業務が中心となります。
外資系の具体的な業務内容は、主に以下の3つに集約されます。
- 投資信託の設定・提供(海外本社の運用商品を投資信託内でパッケージ化し、販売会社へ供給)
- 投資一任契約を通じた運用サービスの提供(年金、金融法人など機関投資家へのアプローチ)
- 日系運用会社への「運用エンジン」の提供・サポート(サブアドバイザリー)
ただし、すべての会社がこのビジネスモデルに当てはまるわけではありません。外資系運用会社の日本拠点には、その戦略によっていくつかのグラデーションが存在します。
例えば、規模の大きな外資系会社になると、日本法人の中に独自の「日本株式」や「日本債券」の運用チームを置いているところもあります(最近は、残念ながら縮小傾向にあるようです)。
その一方で、日本法人では直接の営業活動(直販や直接の顧客開拓)は一切行わず、日系の運用会社を通じて自社の商品を提供するために、その販売会社への情報提供やサポート(マーケティング業務など)だけに特化している外資系運用会社もあります。この裏方の役割を「サブアドバイザリー」といいます。
現場経験から(2)|転職を考えている方への重要なアドバイス
外資系運用会社への転職を検討している方は、その会社が日本拠点でどのレベルの業務(ファンクション)を担っているのかを事前によく確認する必要があります。
「外資系だからグローバルな運用に関われると思ったのに、実際は日本の販売会社への情報提供やサポート業務だけだった」というミスマッチを防ぐためにも、人材紹介会社からの情報や実際の面接を通じて、日本法人の具体的な機能と役割を見極めることが成功の鍵となります。
b. 人事・キャリア
採用面を見ると、大手外資では新卒(第二新卒含む)の採用を行っているケースもありますが、組織の大部分はいわゆる「転職組(中途採用)」で構成されています。外資系、日系を問わず、運用会社からの転職が多くを占めますが、近年は保険会社や銀行の運用部門出身者による外資系運用会社への転職も増えています。
日系運用会社では親会社からの出向組が要職を占めることが多いのに対し、外資系では部長・役員クラスであっても、「内部昇格」または「外部からのヘッドハンティング」で決まるのが特徴です。また、以前は本社から送り込まれた外国人社長が多く見られましたが、最近では日本の市場を熟知した日本人が社長に就任するケースが増えています。ただし、こうした人材はマーケットに多いとは限りませんので、一社で社長交代があると、連鎖的に他社でも役員クラスの異動が発生する「玉突き」現象がよく発生します。
以上のように、外資系運用会社は常に外部に対して門戸を開いています。
そのため、実力さえあれば転職のハードルは低く、キャリアを通じて何社もの外資系を渡り歩く人も珍しくありません(そういう私も、4社の外資系運用会社を経験しました)。
転職を重ねるごとに役職(タイトル)や年収を上げていく「業界内昇進」というキャリア形成は、まさに外資系ならではのリアルな文化と言えます。
4. まとめ
この記事では、資産運用業界における日系企業と外資系企業の違いを、ビジネスモデルやキャリア形成の観点から多面的に解説してきました。
双方の特徴をざっくり一言で表現すると、以下のようになります。
本記事の要約
- 日系運用会社:
- 歴史的に証券系の運用会社が多いが、90年代の規制緩和を機に、外資系や銀行系・保険系の参入も増え、現在では存在感を強めている
- 自前(インハウス)で国内資産を運用しつつ、強みを持つ外資と組んで海外資産を顧客に提供するモデルが主流
- 親会社の出向組が多かったが、最近では人材の多様化が進んでいる
- 外資系運用会社:
- 運用の実行は本国を含むグローバルで行い、日本法人では販売・契約・サポートをメインに行うモデル
- 人材の多くは中途採用、転職を重ねることに役職や年収を上げていく「業界内昇進」というキャリア形成も少なくない
このビジネスモデルの根本的な違いは、そこで働く人たちの「日々の仕事内容」や「求められるキャリアの形」にも直結しています。




