営業目標、営業計画、そして営業戦略──。 この3つが、いつの間にかごちゃまぜになっていませんか。
営業に携わる人なら、誰もが一度は「営業戦略を策定せよ」という場面に直面します。チームであれ個人であれ、営業戦略は今や必要不可欠なものとして扱われています。しかし、その“戦略”が本当に戦略として機能しているケースは、決して多くありません。
1. 本記事の目的と効果
営業チームであれば、曲がりなりにも「営業戦略」を策定することが求められます。しかし、私の知る限り、戦略と呼べるレベルに達しているものは残念ながら多くありません。ほとんどは、単なる目標や願望の羅列であったり、計画書のような何かにとどまっています。
本記事では、30年以上の法人営業の経験をもとに、営業戦略を策定するための「思考のプロセス」を実務レベルで解説します。戦略を“構造”として捉えることで、誰でも再現性のある戦略設計ができるようになるはずです。
2. 営業目標・営業戦略・営業計画の違い
営業目標、営業計画、営業戦略、この3つはどのように異なるのでしょうか?
営業目標
営業組織が、一定の期間内に達成すべき具体的な成果やゴール
営業戦略
営業目標を達成するための方針や方向性の全体像であり、進むべき道筋を定めたもの
営業計画
営業戦略を具体的な行動や数値に落とし込んだ実行スケジュール
本記事の対象である「営業戦略」とは、営業目標の達成に向けて、以下の項目を明らかにし、進むべきルートとそれを実現するための方針を決めることです。
- 目標達成を阻む障壁や課題は何か
- 障壁や課題を解決する方法は何があるのか
- 解決法の中で最も優先度が高いのはどれか
- そのために必要なリソースをどのように配分するのか
- どのような時間軸で、どのようなルートを進むのか
一方、その道筋を日々の行動や数値にまで落とし込んだ具体化なスケジュールが営業計画であり、両者の役割はまったく別物です。営業戦略なくして、営業計画はありません。
この記事では、営業活動の根幹を成す「営業戦略」について、議論したいと思います。
3. 営業戦略の作り方
このテーマは、営業現場に直結する内容であり、少々難易度が高く、扱う領域も広範です。 そこで、ここでは深入りしすぎず、私たちの営業戦略の作り方をシンプルに紹介したいと思います。
私なりの営業戦略の作り方を説明する前に、その前提となる、私自身が捉える営業戦略の定義を以下に示します。
営業戦略とは、組織の目標と具体的なアクションプランを一気通貫で結びつける道筋
戦略が機能するためには、目標から施策までを首尾一貫した流れとして整理し、論理的に積み上げていく必要があります。目標と施策の間のプロセスは幾つもの要素で構成されていますので、それらを順番に整理し、それぞれの役割と目的を明確にすることが欠かせません。流れは以下の通りです。
▼ STEP1:営業目標の設定
- 短期・長期を問わず、具体的で実行可能な全体目標を定めます。
- 壮大な夢や願望ではなく、現実に落とし込めるレベルで定義します。
▼ STEP2:現状の把握
- 目標に対して現状を正確に理解する必要があります。
- 目標と現状のギャップを埋めることが戦略の要諦になります。
▼ STEP3:目標を達成するための課題・障害の抽出
- 目標が達成されていないのは、必ずその達成を阻む課題や障害が存在するからです。戦略を立案するときには、その課題・障害物を徹底的に洗い出す作業が極めて重要になります。
- 課題抽出の際は、リソース不足、ステークホルダー間の利害の衝突、外部環境の変化や競合他社の存在など、さまざまな角度から分析します。
- 抽抽出した課題は整理し、優先順位をつけます。課題が多い場合はカテゴリー化して扱いやすくすると効果的です。
▼ STEP4:課題を解決するための施策の創出
- 抽出した課題に対して、どのような施策を講じるかを決定します。
- 一つの課題に対して複数の解決策や対策を考えます。解決方法は、実行可能性や期待される効果、コストなど、できるだけ異なる視点から考えてみます。
- 検討後は施策を整理し、優先度の高いものから実行計画を立てます。
STEP5:施策の優先順位付けとロードマップの作成
- 各施策について、実施時期、重要性や緊急性、インパクトの大きさ等を考慮し、どれから着手すべきかを明確にします。
- 最後に優先順位に基づき、時系列のロードマップ(行動計画)を作成します。
- 解決策の実行に時間を要するものであれば、期限を数年先に設定したり、緊急性の高い施策は即時に着手する配置をします。
これらのステップを踏むことで、目標 → 現状 → 課題 → 施策 → ロードマップ の一貫した構造が形成されます。 この構造こそが、営業戦略を「再現可能な仕組み」として機能させる鍵です。
これを図に表すとこのようになります。

4. 多くの戦略策定に共通する思考プロセス
ここで紹介した戦略策定の流れは、単純化されていますが、戦略と呼ばれるものに共通した策定手順ではないかと思っています。
つまり、以下の一連の流れが「戦略」を構成する作業要素です。
- 具体的な実行可能な目標は何か
- 目標を達成するためにはどんな課題・障壁があるのか
- その課題を解決する方法は何があるのか
- その解決策の中で優先度は高いものは何か
- それらの解決策をどのようなスケジュールで進めていくのか
別のカテゴリーでシリーズでお伝えしている「営業の構造化アプローチ」も、基本的には同様の考え方とプロセスがもとになっています。
5. まとめ
漠然と営業戦略を考えるのではなく、本記事で紹介した流れとプロセスに沿って構造的に整理することが重要です。 この手順を踏むことで、戦略は単なる思いつきや願望ではなく、再現性のある“仕組み”として機能し始めます。
戦略を構造化することは、「可視化」や「言語化」にも直結します。 目標、現状、課題、施策、ロードマップが一貫した形でつながることで、戦略の説得力が大きく高まり、組織内での合意形成や実行の推進力も格段に強くなります。
営業戦略は、 正しいステップを踏めば、誰でも一定の質で戦略を設計できるようになります。 本記事が、あなたの営業戦略を“構造として捉える”きっかけとなり、日々の営業活動をより強固なものにする一助となれば幸いです。
👉 「営業の思考(コラム)」
に関する全記事一覧はこちら
👉 「営業の構造化アプローチ」
に関する全記事一覧はこちら


