自分の営業成績が安定せず、しかも、同僚の良好な成績を目の当たりにし、ついに自信喪失。追い打ちをかけるように、上司からも「同期入社の彼は立派な成績なのに、なぜ君はパッとしないのだろう?」と言われてしまう始末。
担当者の悩みも、上司(リーダー)の悩みも、本質は営業成績の「バラつき」です。こうした営業成績のバラつきには、どのように対処したらよいのでしょうか?
1. 営業成績のバラつき|2つの意味
営業担当者として、そして営業チームの”リーダー”として、これまで私は「営業成績のバラつき」にはほとほと悩まされました。
営業業績のバラつきには、大きく分けて2つの意味合いが存在します。
- 営業担当者個人の成績が安定しない(=個人の課題)
- 営業担当者間で営業成績に差がある(=組織の問題)
一つは、特定の営業担当者個人の成績が安定せず、年度によって業績が大きく上下してしまうという担当者個人に起因する課題です。
もう一つは、営業担当者間で発生するバラつきです。高い成果を維持し続ける担当者がいる一方で、思うように業績が伸びない担当者も存在しており、これは組織全体として解決すべきマネジメント上の問題と言えます。
いずれのケースにおいても、組織の「再現性」という観点から見れば、早急に解決しなければならない深刻な問題であることに変わりはありません。
2. 個人の課題|営業担当者の陥りがちなパターンがバラつきを生む
課題は組織面だけにとどまりません。営業担当者個人の営業行動にも、再現性を損なう典型的な営業行動が散見されます。以下は、営業担当者が陥りやすい代表的なパターンです。
”カタログ営業”
- 商品のスペックを網羅した資料を見せながら説明を行う営業スタイル。
- 受動的で差別化が難しいため、顧客の課題に合わせた提案が弱く、表面的な説明に終始しがちになる。
”場当たり営業”
- 明確な戦略をもたず、その場の思いつきや惰性で行う営業スタイル。
- 成功も失敗も偶然性が高いため、組織として再現性のある成果に繋げることが極めて困難になります。
”環境依存の営業”
- 景気や市場、競合の動向など、自社でコントロールできない外部要因に業績が左右される営業スタイル。
- 環境の良し悪しに成果が埋もれ、担当者の真の実力が見えにくくなります。
”カタログ営業”と”場当たり営業”はよく知られた言葉ですが、最後の”環境依存の営業”は私の造語です。外部環境が良好なときは営業成績も上がり、自他ともに「優秀な営業パーソン」とみられるのですが、環境が暗転すると、途端に成績が悪化するような営業を指します。
外部環境の変化に漫然と従うだけで、そこには、自律的に何かを変えようという意思がみられません。2008年のリーマンショック(金融危機)の前後に、このタイプの営業パーソンがとても多く見られました。「環境が悪いのだから、何をやっても無理!」という諦めが蔓延したのです。でも、これって職務放棄ですよね??
現場経験から(1)|営業テクニック?
営業成績が低迷しているとき、つい手が伸びてしまうのが「啓発本」の類です。「トップセールスの〇〇術」「売れる営業は〇〇をしない!」「売上が×倍になる営業術」ーーー。これらの多くは、営業の「テクニック」を主たるテーマにしています。外部機関が提供するプレゼンテーションやネゴシエーション研修も同様です。
実を言えば、私もこれまでに数多くの研修を受けてきました。受講直後は、まるで生まれ変わったような気がするのですが、一週間も経てば、すっかり元の木阿弥に戻ってしまう。そんな経験も皆さんもあるかと思います。
なぜなら、これらはあくまで「道具」に過ぎないからです。その形だけを模倣しても、本質的な改善は期待できません。これらの技術を発信した執筆者たちが、どのような考えや判断基準を持ってその行動に至ったのか、その「根本にある考え方」までを理解しない限り、実効性は乏しいというのが、現場を経験してきた私の実感です。
3. 組織の問題|営業担当者間で成績がバラつくのはなぜ?
担当者Aはいつも好成績を残しているのに、担当者Bはなかなか成績が伸びない。経験の違いが原因なのか?それとも、担当している顧客属性による運・不運によるもの?
もちろん、そうした影響が多少ともあることは否定しませんが、それらの要因を除いても、担当者間の成績のバラつきは出てくるものです。それは、いったい何故なのでしょう?
営業という職種は、顧客にとっては会社を代表する窓口であるがゆえに、営業活動が属人化しやすくなるという「構造的な弱点」を抱えている、というのが、長年、営業の第一線に立ち続けてきた私の答えです。これが営業担当者間の成果のバラつきを生むことになるのです。
サイロ化現象の弊害
営業組織の構造的な弱点
- 一般的に営業担当者は、特定の顧客を単独で担当することが多いことから、当該顧客のことは「誰よりも知っている」という自負を生みやすい
- 加えて、顧客の状況はそれぞれ異なるのが普通であるため、営業担当者の対応方法も異なることから、担当者個人の裁量余地が大きくなりがち
- この結果、営業チーム内で「サイロ化(または個人商店化)」が醸成されやすいという、仕組み上のリスクを孕んでいる
サイロ化の弊害
- 個々の営業活動に関する情報が一元化されないため、有用な情報の認識・共有がなされず、また、組織としての意思決定が遅れたりする
- この結果、組織全体のパフォーマンスが不安定になる、つまり組織としての再現性が担保されないという深刻な課題を抱えることになりがちである。

4. 解決策としての「営業の構造化」
会社対会社の法人ビジネス(B2B)においては、本来、個人の裁量に依存せず「共通言語」で営業プロセスを運用することが強く求められます。なぜなら、営業担当者は会社の「窓口」ではありますが、あくまで会社の代理として、顧客と接しているにすぎないからです。担当者個人の思いつきや勝手な判断で、ビジネスを進めるのはもってのほかです。
営業活動をチームメンバーと複数人で担当するケースは多くありません。一般的には、ひとつの顧客に対して1名の担当者がつくのが一般的です。このため、他の担当者が抱える顧客の状況については、詳しく知る機会がどうしても少なくなります。
特に、成果を出している営業担当者ほど「この顧客の事情は自分が一番よく知っている」という強い自負もあるため、周囲はその担当者の営業活動に対して口を出しにくい空気が生まれがちです。
私はこうした属人化の状況に強い違和感を持っており、いわば営業組織における「構造的な弱点」であると捉えていました。この閉塞感を打破する手段を模索した先に行き着いたのが、まさに「営業の構造化アプローチ」だったのです。
営業組織が安定して成果を出すためには、営業担当者の行動をフレームワーク化し、そのプロセスを可視化された基準で遂行を管理するという、「構造化された営業」が不可欠なのです。属人的な営業から脱却し、誰がやっても一定の成果が出る仕組みをつくることこそ、営業組織の本質的な課題解決につながります。そして、フレームワークに準じた活動をすることによって、担当者個人が陥りやすい営業パターンを回避することも可能になります。
現場経験から(2)|川上と川下
営業における組織(フレームワーク)と担当者個人の関係は、まるで川の流れのようだと思うことがあります。土台となる営業フレームワークが「川上」、個人の営業テクニックやセンスが「川下」に位置付けられます。
川下は河川の末端に位置し、常に上流の水流や環境から決定的な影響を受けます。つまり、川上が正しく設計され、美しく整っているからこそ、初めて川下における個人の技術やセンスが真の価値を発揮することを、40年近い現場経験で何度も経験、痛感しました。
5. まとめ
営業という仕事は、景気、市場環境、顧客事情、担当者の経験値など、数多くの要因に影響を受けるため、成果の再現性を確保することは非常に難しいのです。だからこそ、個々の担当者の属人的なテクニックに依存するのではなく、組織として仕組みを整え、規律をもって長期的に運用することが不可欠な経営課題だと言えます。
本記事の要約
- 営業成績のバラつきには、営業担当者間で成績に差が生じるという組織の問題と、担当者個人の成績が安定しないという個人の課題という2つの意味合いがある
- 営業担当者はあくまで会社を代理しているにすぎず、担当者個人の勝手な判断による営業活動を回避しなければならない
- 組織営業の再現性を確保するためには、組織としての型(フレームワーク)を確立し、それらを可視化し、管理するという「構造化された営業」が不可欠
営業力は個人のスキルで解決できる領域を超えており、構造化された型を持つかどうかが、組織として成果を安定させられるかの分岐点になることを、まず理解すべきでしょう。





この記事でわかること