「あなたの営業スタイルはハンター型ですか、それともファーマー型ですか?」
私が外資系企業へ転職する際、入社時の面接で必ず聞かれた質問です。ハンターか、それともファーマーかーーー、営業の特性をわかりやすく特徴づけるために使われる「ステレオタイプ」の分類ですよね。
しかし、営業成果を左右するのは、本当に「営業スタイルの違い」なのでしょうか。
約40年の法人営業の経験を振り返ってわかったことは、営業スタイル自体は表面的な差でしかなく、それよりも、その背景にある営業に対する考えを「型」として確立しているかどうかが、より重要であるということです。
1. 何のためのスタイル診断?
私自身、外資系企業の入社時面接で、「あなたの営業スタイルはハンター型か、ファーマー型か」という質問がよく投げかけられました。
動く獲物を追いかけるハンターと、作物を育てるファーマーという比喩は、営業の「アプローチ」を分かりやすく説明するためのものです。圧倒的な行動力で新規開拓を得意とする人はハンター型、特に既存顧客と時間をかけて深い信頼関係を構築する人はファーマー型といった分類は、営業の世界では広く浸透しています。外資系らしい、ストレートな質問とも言えるでしょう。
私も経験がありますが、面接を受けた会社が新規開拓の人材を求めていることが分かっている場合、この質問に対して「私は、ファーマー系です」と答えるのは、なかなか勇気がいることです。
しかし、40年弱の法人営業の経験を振り返ると、このスタイル分類だけでは説明しきれない場面が多く存在します。新規開拓の局面でも、既存顧客の深耕でも、状況によって求められる判断や行動は大きく異なります。
つまり、営業成果を左右するのは「どちらの型か」という固定的なスタイルではなく、複雑かつ流動的な営業場面において、自身の営業活動をどのように体系化し、どのような判断軸を持って行動するかです。

2. ハンター型の例(フィクション)
「ハンター型か、ファーマー型か?」という質問の背景には、おそらく「ハンター型」の方が新規開拓営業としては優れているという思い込みがあるのでしょう。ゼロから新規契約を獲得するのも、既存顧客から追加契約を受注するのも、会社の収益への貢献度という点ではまったく同じはずなのに、なぜか前者の方がスポットライトを浴び、高く評価される、私自身、そんな現場を幾度となく目の当たりにしてきました。
天性の嗅覚、つまり、獲物の見極めと仕掛けるタイミングについて、ファーマーにはない優れた性質を持っているという思い込みです。
そこで、私が考える「ハンター型」の例を小説風(?)に取り上げ、そのスタイルとは何かを考えてみました(注:私はハンティングの専門家ではありませんので、以下はあくまで勝手に創作したフィクションです)。
- 私は、獲物を探しに初めての場所を訪れた。幸運なことに、すぐに獲物を見つけることができた。「なんて、ラッキーなんだ!」と思って追いかけた瞬間、同じ獲物を狙うライバルが何人も現れた。
- しかも彼らは、ずっと前からその獲物を狙っていたらしく、いろんな策を練っていた。つまり私は完全には出遅れていたのだ!
- 案の定、その獲物はライバルのひとりに奪われてしまった。彼はこの土地に獲物が現れそうだと早い段階で見抜き、獲物の性格や習性に関する情報を仕入れ、幾つの罠を仕掛けていた。
- そして、「その獲物を間違いなく捕獲できるだろう」と確信して、仲間ともその情報を共有しあっていた。準備は、最初から万全だったのだ!
3. ハンターもファーマーも本質は同じ
ハンターは動く獲物を追い、ファーマーは作物を育てるという比喩は、営業スタイルを分かりやすく説明するためによく使われます。しかし、わかりやすいがゆえに、誤解を生む表現だと私は思っています。
成果を得るまでのプロセスに目を向けると、両者が行っていることは本質的に同じです。どちらも、獲得までの道筋を描くためには、以下のプロセスを踏んでいるはずです。
- 必要・有効な情報を入手し、整理する
- 状況を分析、評価する
- 蓋然性の高いシナリオに適した最適な戦略を立てる
- その戦略を実行するための準備をする
「ハンター型」という言葉からは、鋭い嗅覚や本能で獲物を仕留めるイメージが連想されがちです。しかし、実際に成果を出す人は、ハンター型であれファーマー型であれ、例外なく自分なりの「型」を持ち、それに基づいて判断しています。
たとえば、ハンター型の人が「獲物の見極め」や「仕掛けのタイミング」を重視するのは、瞬間的な勘ではなく、過去の経験から形成された判断基準があるからです。ファーマー型の人が顧客との関係を育てる際も、同じように情報整理と戦略設計を行っています。
4. 経験を体系化・構造化することで自分の「型」が完成
しかし、こうした過去の経験を経験として終わらせるだけでは、営業の成果を安定さることは難しいのです。経験をもとに新たな情報や学びを加え、それを体系化・構造化していくことで、ようやく「型」が完成します。
営業スタイルの違いは表面的なものであり、成果を生み出すための構造は共通しています。重要なのは、どちらの型かではなく、営業プロセスの構造に着目し、状況に応じて最適な行動を確立するための「型=フレームワーク」を構築することです。
そして、「型」を作って終わりではなく、この「型」をもとに常に考え続け、この「型」を進化・深化させることが、極めて重要なプロセスだと言えるでしょう。このプロセスこそが、「思考×構造化」の本質になのです。
5. まとめ
ハンター型かファーマー型かという営業スタイルの違いは、営業を理解するうえで分かりやすい枠組みではあります。しかし、40年弱の法人営業の経験を通じて実感してきたのは、成果を生み出す人ほど、スタイルそのものよりも、成果への道筋をどう構造化して捉えるかに意識を向けているという事実です。以下は、当記事のまとめです。
本記事の要約
- ハンター系/ファーマ系に代表される営業の「スタイル」の違いは、表面的なものにすぎない
- 重要なのは、経験を体系化・構造化することで、「型=フレームワーク」を完成することであり、それによって営業成果の安定と再現性が図られる
- 「型=フレームワーク」をもとに常に考え、この「型」を深化・深化させるプロセスことが「思考×構造化」である
営業スタイルはあくまで表面的な分類にすぎません。営業プロセスを分解し、構造化することで、再現性のある成果を生み出すための判断が、より確かなものになっていきます。
ちなみに、この「ハンターか?ファーマーか?」という質問に対して、私は、毎回「フィッシャーマン(漁師)です」と答えていました。言うまでもなく、フィッシャーマンも本質は同じです。
了





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