営業の構造化について、これまでの記事では「総論(概念)」を中心に解説してきましたが、ここからは具体的な方法論についてお話ししたいと思います。
法人ビジネスは、新規開拓から成約、そしてその後の関係維持に至るまでの道のりは非常に長く、明確な羅針盤を持たずに突き進めば、担当者はすぐに五里霧中に陥ってしまいます。この長期にわたる活動の中で「今、何をすべきか」を迷わずに判断するためには、確固たる基準を設け、それに基づいて全体を切り分けていく思考法が不可欠です。これこそが、営業活動における「構造化」の本質に他なりません。
1. 営業プロセスの「構造化」の分類
営業を「構造化」するとは、別記事『営業に「構造化」を取り入れよう!|営業を再現可能な型に変える方法』にも書いた通り、「営業プロセスを細かく分解して「何が構成要素になっているのか」を特定する、いわば「営業活動の棚卸しと整理」を行い、次にそれらの要素を組み立てて強固な仕組みへと転換する」ことです。
本ブログでは、構成要素として「営業ステージ(進捗)」にフォーカスしていますが、営業プロセスを構成する要素は「営業ステージ」だけではありません。例えば、次のような切り口もあります。いずれの基準であっても、組織が抱える課題に直結する基準であることが望ましいと言えます。
| 分解基準 | 具体的項目 |
|---|---|
| セグメント基準 | 顧客の属性、顧客の重要度(Tier1、Tier2など) |
| 役割・担当基準 | 新規開拓、既存深耕、顧客サービス、マーケティングなど |
| 営業担当者の管理基準 | 担当する顧客総体の管理、個々の顧客管理 |
この記事では「営業ステージ」を基準にした構造化を扱います。その理由は、法人ビジネスの営業プロセスは長期かつ複雑であるため、顧客ごとに「今どのステージにいるのか」を正しく把握し、そのステージに応じた適切なアクションを取ることが成果の鍵となるからです。
なお、扱う構造は単一基準にこだわる必要はありません。複数基準を組み合わせて管理することも有用です。以下は、❶ 営業ステージによる分類(横軸)と❷ 営業担当者の管理基準(縦軸)による分類を組み合わせた例です。営業担当者の管理区分とは、営業担当者が担当する顧客群をグループ分けすることによる管理と、個々の顧客単位の管理という分類を指します。

2. 営業ステージの一般的な分類
営業プロセスをステージで分解する区分は、業種や業態によっても多少変わってきますが、一般的には「リード獲得」、「ニーズ分析」、「提案」、「クロージング」、「アフターフォロー」などが使われます。
いずれにせよ、自社営業の実態に即したステージ分類であること、そして自社組織の区分け(機能や役割の区分)との親和性があることを考慮したうえで基準を決定することが重要です。これらを踏まえたうえで、私がおすすめする「6つにステージ分類」をご紹介します。
- 潜在顧客の探索 (Prospecting)
- 見込み客への絞り込み(Qualifying)
- 商品提案(Proposal)
- 成約に向けた障害の特定と解決(Handling Objection)
- 成約(Closing)
- 関係維持・解約防止(retention)
新規開拓に相当する「❶ 潜在顧客の探索」から「❺ 成約(Closing)」までのプロセスをどこまで細かく区切るかは、ターゲット層や業界のビジネス慣行に応じて調整が必要です。
また、成約で終わりではなく、成約後の関係深化が重要なビジネスであれば、「❻ 関係維持・解約防止」のステージを細分化することも必要です。
例えば、サブスクリプション型やストック型ビジネスのように、解約を防止したり、トップアップ(同商品の追加購入)やクロスセル(関連商品の購入)の重要性が高いのであれば、特に成約以降の工程の設計を細かく設けるべきでしょう。
なお、「こんなステージ分けは頭の中に入っており、わざわざ「構造化」なんて大げさな名前をつけて設計するものではない」と感じる人もいるかもしれません。しかし、実際の営業活動の現場では、常にさまざまは雑音やノイズ、トラブルが入ってきて、本来必要なステップが狂ってきてしまうことは往々にしてあります。
ステージを「可視化」または「言語化」したうえで、各ステージで適切なアクションを明確に規定することは、担当者個人にとっても、組織にとっても、営業成果の再現性を確保するためには必要不可欠です。
3. 各ステージにおける適切なアクション
営業ステージ分類の目的は、単にプロセスを区切ることではありません。各ステージにおいて「何をすべきか」を明確に定義づけることこそが核心です。これにより、以下の3つの効果が生まれます。
- ステージに応じた最適なアクションが取れる
- やるべき行動の漏れやズレを組織として管理できる
- 属人的な判断を排除し、再現性を高められる
一方、よく見られる「ズレた行動」の例としては、次のようなものがあります。
(例1)
まだ顧客ニーズの背景を十分に把握していないのにもかかわらず、すぐに自社商品の紹介を始めてしまう
何がズレているのか?
案件はまだ初期段階(課題抽出、ヒアリング)に過ぎないにもかかわらず、提案フェーズのアクションへと先走っている
(例2)
価格やアフターサービスの検討段階(最終局面)に入っているのに、商品の特徴やメリットばかり訴求している
何がズレているのか?
案件は既に成約直前まで進んでいる状況なのに、営業アクションが初期の商品説明段階にとどまっている
(例3)
解約兆候が出ているのに、それに気づかず、クロスセル(新たな別商品)の紹介を始めてしまう
何がズレているのか?
本来は顧客の不満や懸念を早期に把握すべき段階であるにもかかわらず、目先の売上を追うような追加提案ばかりしている
もちろん、実際の営業現場では、顧客の状況によっては、必要なステップを飛ばさざる得ない場面や、あえて飛ばした方がスムーズに進む場面もあります。しかし、それを無意識に行うのと、必要なステップであることを認識したうえで意図的に行うのとでは、その後の状況に与える影響は大きく異なります。
「予想外に状況が進んでいる案件だから、顧客の合意を得た上でステップBをスキップしてCに進もう」とコントロールできていれば、その後に何らかの問題が発生してもすぐに原因を特定し、軌道修正が可能です。
4. 効果としての「気づき」
上で例示した「認識やアクションのズレ」は、営業の現場において本当に頻発します。それぞれの営業ステージと適切な実務アクションを正しく紐づけることは、担当者個人のみならず、営業組織としても最低限取り組まなければならない必須の課題です。
このアプローチによって期待される効果のひつとに、営業担当者の中に主体的な「気づき」が生まれる点にあります。
例えば、「初期ステージにおいて、なぜ詳細な商品紹介をしてしまうことが拙速にあたるのだろう?」という疑問が生まれることで、営業の目的へと思考がつながっていくからです。
プロセスの構造化はあくまで「型(フレームワーク)」に過ぎません。しかし、この強固な土台があるからこそ、営業担当者一人ひとりの「思考の質」を飛躍的に高めるための強力な発射台になるのです。
4. まとめ
営業プロセスを単に細かく区切るだけでは、組織の成果を最大化することはできません。設定した「営業ステージ」のそれぞれに対して、迷わず実行すべき具体的な実務アクションが明確に定義され、両者が強固に結びついたとき、プロセスは初めて本当の意味での「構造化」を果たします。
これまで個人のセンスや勘に頼らざるを得なかった場当たり的な活動を、誰がやっても一貫した成果を生み出せる組織の共通言語へと転換することこそが、構造化アプローチの本質であり、目指すべきゴールです。
本記事の要約
- 営業プロセスを構成する要素は「営業ステージ」以外の基準もあるが、いずれの基準であっても、組織が抱える課題に直結する基準であることが望ましいと言える。
- 営業ステージを基準に構造化した場合、ステージ分類を「可視化/言語化」したうえで、各ステージで適切なアクションを明確に規定することは、担当者個人、組織の両者にとって営業成果の再現性を確保するためには必要不可欠。
- 営業プロセスの構造化はあくまで「型(フレームワーク)」に過ぎず、この土台をもとに営業担当者一人ひとりが「思考の質」を高めていくことが成功の鍵である
次回の記事からは、今回定義した6つの各営業ステージにおいて「具体的にどのような行動を取り、どのような情報を収集すべきなのか」について、より実践的なロードマップを順次ご紹介していきます。





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