適材適所|人材中心の配置
適材適所とは、その人の能力や適性などを正しく評価し、より活躍できる業務や地位に配置する考え方です。しかし、現在のビジネス環境、とりわけ営業領域においては、この概念は必ずしも最適ではないと考えています。
反対の概念が「適所適材」です。業務・職務を起点にし、その役割に最も適した人材を配置するという考え方です。どちらも人材と業務の関係性を表しているのは同じあり、それぞれにメリット・デメリットがあるのは確かですが、少なくとも営業組織には、後者、すなわち適所適材の方が適していると思います。
まずは、適材適所の方について整理してみましょう。上で述べた通り、適材適所は❶業務・地位の適切な配置と❷人材の適正な評価とが鍵になります。この2つの側面から適材適所が抱える課題を掘り下げていきます。
適材適所の課題❶:職務・業務との整合性の欠如
まず先に「業務の適合性」からみていきます。
従来の日本的経営システムでは、適材適所が主流でした。人が中心であり、職務・業務はその人に付随するという発想です。ゼネラリスト育成という観点では一定の合理性がありますが、職務・業務との適合性は後回しになりがちです。
また、少数の「できる人材」を中心に、組織全体の役割や業務配置を組み替えてしまうケースも少なくありません。サッカーでいえば、ジダンやメッシのようなスター選手を軸に布陣(フォーメーション)そのものを変えてしまうようなものです。彼らのように突出した才能と能力があるならまだしも、そうでなければ業務全体のバランスが崩れ、業務が適正に機能しなくなるリスクを抱えることになります。
適材適所の課題❷:人材の適切な評価
次に「人材の評価」の問題を考えてみましょう。適材適所の下での人材評価は「人となり」や「コミュニケーション能力」など、人格的要素に寄りがちです。
地位についても同様です。右のイラストにも示している通り、本来、営業担当者に求められるスキルと、営業マネージャーに求められるリーダーシップのスキルは異なります。しかし、営業担当者としての経験が豊富だったり、営業成績が良いという理由だけで営業マネージャーに昇格するケースは珍しくありません。
営業人材は本来、明確な階層構造を持っています。最下層、つまりすべての土台には「組織人としての資質」があり、その上に「営業担当者としてのスキル」、さらに「マネジメント的な視点とスキル」そして最上位に「リーダーシップスキル」が位置付けられます。階層が上がるほど、川上、つまり全体戦略を見通す俯瞰力が求められます。

しかし、人を中心に地位を与える「適材適所」的な発想では、この評価軸が曖昧になりがちです。本来必要なスキルセットと役割がかみ合わなくなり、組織全体のパフォーマンスを下げる要因になるのです。
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営業パーソンに求めあれる資質・役割は、4層で構成されていると考えられます。詳しくは『営業の資質と役割の「4層構造」』にて解説しています。
適材適所|職務中心の配置
一方の適所適材は、職務・業務を中心に据え、そこに最適な人材を配置するという考え方です。専門性を重視した配置方法であり、終身雇用制度や年功序列といった日本的経営から成果主義・能力主義へ移行する現在の環境には適しています。実際、この考え方を採用する企業も増えているようです。
ただし、適所適材にも課題があります。それは、適所適材そのものの問題というより、運用上の難しさにあります。まず、ゼネラリスト育成が阻害される可能性です。私は、営業という特定領域の中では、一定の幅を持ったゼネラリストであるべきだと考えております。新規開拓、既存顧客の維持、クライアントサービス、商品説明など、営業担当者は複数の機能とスキルをもつべきです。職務内容を細分化しすぎると、営業全体を俯瞰できるマネージャーが育ちにくくなるため、職務設計には慎重さが求められます。
さらに難しいのが、(1)該当業務や地位に適した人材が組織内にいない場合や(2)適任者が退職してしまった場合の対応です。(1)の場合、ヘッドカウント(総人数)が限られている組織では、不適任者に退場してもらう判断が必要になることもあります。ドライと思われている外資系企業であっても、退場に対する心理的なハードルは高いものです。(2)の場合には、優秀な人材ほど他社に引き抜かれてしまうリスクが高くなり、欠員補充は容易ではありません。特に小規模な組織では、適所適材の運用が難しくなり場面もあります。
このように、適所適材には運用上の難しさが伴います。しかし、長期的にみれば、人に職務・業務を合わせる適材適所よりも、職務・業務に人を合わせる適所適材の方が、現代の営業組織には適していると考えます。営業という職務は、役割ごとに求められるスキルセットが明確に異なり、組織として成果を最大化するには、職務起点の配置がより合理的だからです。


