外資系企業で営業マネージャーを務めていた頃、私はこれまで数多くの営業パーソンの中途採用に携わってきました。しかし、数回の面接だけで候補者の真価を見抜くことは、想像以上に難しいものです。だからこそ私は、実績よりも「思考の質」を問う質問を重視してきました。
即戦力を求める中途採用の場合、人事部(HR)ではなく、実際に一緒に働く部署のメンバーが面接官(インタビュアー)を務めるケースが少なくありません。しかし、採用の専門家ではありませんから、どうしても履歴書や経歴書の表面的な情報に引っ張られがちで、候補者の本質を深く評価することは簡単ではありません。
完璧な経歴書と盛られた実績
外資系企業における中途採用の場合、候補者が会社に直接コンタクトしてくるケースは少なく、多くは人材紹介会社(ヘッドハンター)経由で紹介されます。紹介される人材は、経歴書も履歴書も一点の曇りもない経歴の持ち主で、それらの中には過去の成約実績がこれでもかと並んでいます。
面接では、過去の成約の経緯や工夫した点、過去の失敗例、そして顧客ネットワークなどを中心に確認することが一般的です。しかし、これはあくまで表に出ている情報の裏付けにすぎません。もちろん、それはそれで重要なことなのですが、正直なところ、実績は”盛ろう”と思えばいくらでも盛ることが可能です。
また、たとえ実績が事実だとしても、それが本人の貢献によるものか、その人が属している企業ブランドの力なのかは判断がつきません。特にB2B営業の場合、企業看板による貢献は非常に大きいと言えるでしょう。こうした理由から、経歴書や実績だけで候補者を評価するのは危険なのです。
採用において重視すべき「思考の質」
私は、候補者が営業担当者であれ営業マネージャーであれ、事実確認よりも「営業に対する考え方」や「思考の質」を捉える質問を中心に据えていました。
事実に関する質問が必要な場面でも、必ず背景や理由を掘り下げます。「なぜそう言えるのか」、「その判断の根拠は何か」、「他の選択肢をどう評価したのか」など、一つ回答に対して、さらに深堀りする質問を重ねていきます。すると、思考が整理されていない候補者は、回答に矛盾が出たり、そもそも答えられなかったりします。思考の質と営業の質には強い相関があります。考えが浅い候補者は、往々にして場当たり的な営業をしていることが多いのです。
レファレンス・チェックは“最後の砦”
このように事実の確認ではなく、思考の質を見極める質問をどれだけ工夫したとしても、面接だけで採用の確度を7割以上に引き上げるのは難しいのが現実です。だからこそ絶対に欠かせないのが「レファレンス・チェック」です。レファレンス・チェックでは、前職の上司や同僚に勤務状況や実績、人柄などを確認します。オフィシャルな形式のレファレンス・チェックもありますが、私はできるだけ本音を聞ける形で、複数の関係者にヒアリングするようにしています。
特に重要なのは、営業パーソンの4層構造のうちの「組織人」としての評価です。私の経験上、面接だけでは、組織人としての人となりを見抜くことは非常に難しいからです。過去の営業成績も優秀で、かつ面接時の質問にも淀みなく回答していたとしても、いざチームに入るとチームメンバーとの協働ができないという人も決して珍しくありません。よって、この「組織人」としての評価をレファレンス・チェックでは確認するようにしています。
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ヘッドハンターの紹介文や経歴書が完璧、かつ面接でも淀みなく回答していた候補者が、レファレンス・チェックでは評価がまったく振るわないーーーそんなケースも決して珍しくありません。そうしたときは、正直なところ胸をなでおろすこともあります。レファレンスなしの採用は、「当たるも八卦当たらぬも八卦」、運任せの採用になりかねないと思います。
人の真価をたった1回や2回の面接で見極めるのは、まずもって不可能です。だからこそ、面接時には、思考の質を確認できる質問を入念に準備すること、最後は必ずレファレンスチェックを実施すること、この2つが、中途採用の精度を高めるための必要なプロセスだと強く感じています。


