営業プロセス6ステージの中盤フェーズ|提案の質と障害解決力を高める方法

営業の構造化アプローチ

営業の構造化アプローチ(第9回)

営業プロセスを構成する6つのステージのうち、中盤に位置する「❸商品提案(Proposal)」と「❹成約に向けた障害の特定と解決(Handling Objection)」は、案件の成否を大きく左右する重要フェーズです。ここでは、この2つのステージで営業担当者が取るべき具体的なアクションを整理していきます。


商品提案(Proposal)

情報収集と仮説検証を繰り返す最初の2ステージを経て、自社商品を提案できる段階に到達します。提案の形式は、顧客の社内会議でのプレゼンテーションから担当者への個別説明までさまざまですが、いずれのケースであれ、事前準備の質が提案の成否を左右します。商品提案の前に準備をすべき項目を以下に挙げてみます。

a. 提案商品と顧客ニーズとのギャップの把握
顧客のニーズを100%満たす商品の存在は極めて稀です。まずは「顧客のニーズと自社商品の間のどこにギャップがあるのか」を正確に把握することが出発点です。ただし、ここで重要なのは、顧客が表面的に語るニーズを鵜呑みするだけでなく、その背後にある根本的なニーズを理解する必要があります。マーケティングで有名な「ドリルと穴」の例のように、顧客が求めているのは「穴」そのものではなく、「棚を設置すること」だったり、「絵画を掛けること」だったりするかもしれません。つまり、表層のニーズの背後にある真のニーズを見出すことによって、解決策の幅も広がってきます。
実は、過去の担当者からの引継いでいるだけで、当の担当者本人もそのニーズの本質的な意味を理解していないケースは少なくありません。ですから、ニーズをお互いに深堀していくことで、ギャップを少しでも縮めていく姿勢が不可欠です。

b. 自社商品の強味を訴求
自社商品の強みを訴求することは重要ですが、単なる「我田引水」的な説明になってしまうと、途端に説得力を失います。そのために必要なのは、自社商品の訴求ポイントを複数準備しておくことです。そのうえで、顧客のニーズに応じて優先順位を柔軟に変えることです。
差別化ポイントは、商品特性に関連したものにとどまらず、開発や基礎研究のプロセスや同チームの陣容、自社の歴史や文化など多岐にわたります。重要なのは、これらを単体でアピールするのではなく、それぞれを線として結びつけ、ストーリーとして構成されるように努力すべきです。そうすることで、自社商品の提案には深みが生まれます。

c. 競合分析
商品提案では、競合商品との比較、つまり差別化の視点は欠かせません。自社商品の強味だと思って説明した内容が、実は他社も同じように語っているポイントだった、というのはよくある話です。担当者からすれば「どの会社も似たような説明ばかり」という印象になりかねず、提案の独自性が薄れてしまいます。
扱っている商品が一般に公開されていないようなものであれば、競合情報は入手しづらいため、社内の他のチームメンバーから得られる情報は非常に貴重です。または、業界ネットワークを活用した情報も貴重なソースになります。日頃から組織として競合情報を蓄積しておくことが重要です。

d. 一貫したメッセージングの設計
訴求ポイントを複数準備し、それらの点と点を関連付け、ストーリーとして構成することで、提案全体を貫くメッセージングが生まれます。この一貫したメッセージングを事前に設計しておくことで、プレゼンテーションや説明の説得力が大きく高まります。

❹ 成約に向けた障害の特定と解決(Handling Objection)

法人を顧客とする営業(B2B)では、意思決定プロセスに複数のレイヤーが関わるため、提案後のプロセスが長期化しがちです。この期間の対応こそが、案件の勝敗を左右する最重要フェーズといっても過言ではありません。

a. 提案後の情報収集とフォローアップ
プレゼンなどの提案の場で出た質問や疑問に答えるだけでなく、その背後にある懸念を推測し、適切なフォローアップを継続する必要があります。
そのためには、提案後も情報収集をやめてはいけません。このステージで収集すべき情報も多岐にわたります。例を挙げてみます。

b. 障害要因・交渉ポイントの洗い出しと特定
得られた情報をもとに、致命傷となり得る障害要因をできるだけ多く洗い出し、対処すべきアクションの優先度・重要度を判定します。
顧客の要望と自社の方針にズレがある場合は、顧客と交渉する必要があります。障害要因の解消を並行して、交渉準備を進めることが求められます(交渉準備については、別途、記事を書く予定です)。

c. 解決策の準備と実践
上記2つによって判明した課題への対策を、優先度の高いものから計画的に着手していきます。交渉が必要な場合には、交渉過程で新たな情報が得られることも多いため、状況に応じて計画を柔軟に更新していくことが重要です。

まとめ

初回のコンタクトから、この「❹ 成約に向けた障害の特定と解決」までの道のりは非常に長く、業界によっては数年に及ぶこともあります。しかし、この長い旅路を「ステージ」という営業プロセスを構成する要素に分解し、各ステージで取るべきアクションをロードマップとして設計します。
そして、各ステージで質の高い情報の収集を継続し、アップデートされた情報をもとに進むべきルートを臨機応変に変更していくことこそが「ビジネスをドライブすること」であり、営業の構造化アプローチの真髄と言えます。