外資系運用会社の仕事を教えます!|組織構造とビジネスについて

外資系アセマネの現場から

外資系運用会社と聞くと、なんとなくスマートで洗練されていて、給与も高そう、というイメージですよね。もちろん否定はしませんが、実際に働いてみると、日系とは異なる特徴があります。


この記事でわかること

  • 本記事では、あまり表面化することのない外資系アセットマネジメント(日本法人)の実態について、組織構造やビジネス展開の両面から整理しています

  • 各社の国内における設立年数や企業規模による差異を踏まえつつ、多くの外資系運用会社に共通する本質的な機能やビジネスモデルを網羅しています

  • 日系・外資系の双方で重ねた約40年の実務経験をもとに、外資系アセットマネジメントへ関心を持つ方々に向けて、他では得られない「生の情報」をお届けします

外資系運用会社と一括りにされがちですが、その日本法人の組織規模には幅があります。ブラックロック・ジャパン(374名、2026年3月1日現在)やフィデリティ投信(166名、2025年4月現在)のように数百人規模の会社もあれば、たとえ本国では大手であっても、日本法人は数十人の会社であることも珍しくありません。

グローバル規模の運用会社の場合、多くがアジアのハブ拠点をシンガポールや香港に置いています。そのため中規模以下の日本法人においては、日本法人内で指揮命令系統(レポートライン)が完結せず、一部の部門はアジアパシフィック(APAC)本部の直轄となるケースが少なくありません。例えば、日本法人のコンプライアンス部が日本法人社長の指揮下ではなく、シンガポールのコンプライアンス本部のレポートラインに直接組み込まれるといった組織構造が見られることもあります。

かつては日本がアジアのハブだった時期もありましたが、言語面のハードルなどもあり、残念ながら徐々にシンガポールなどへ移っていきました。



日本法人の規模によって異なりますが、外資系運用会社には、少なくとも営業部門と法務・コンプライアンスの2部署は必ず存在します。この2部署以外には、名称は会社によって異なりますが。代表的なものとして次のような部署があます。

会社の規模に応じて、それぞれ独立して部署が設定されている会社もあれば、複数の事務を兼務させている会社もあります。また、前述の通り、営業部以外の部署が海外本社やアジアのハブ拠点の指揮命令下に置かれているケースも珍しくありません。



組織規模の大小は、若手人材の採用や人材面においても大きな影響を及ぼします。

本社からの強力な業績プレッシャーが強いため、採用人材も「即戦力になるか否か」に重点が置かれます。つまり、若手人材を腰を据えて育成するというインセンティブが小さいのです。組織規模が小さければ小さいほど、人材育成の余裕がないといのが私の印象です。

外資はトップの交代が比較的多く、しかも影響も大きくなります。特に小規模組織だと、社長が代わると、運営方針や雰囲気もガラっと変わることも少なくありません。また、就任直後から自分の信頼するメンバーを外部から連れてきたりして、元からいるスタッフにとっては、同僚や上司が大きく変わってしまうこともあります。


現場経験から|キャリア形成について
個人的な意見ですが、人が育つのは上司の指導やOJT制度の効果だけではありません。むしろ、同期・同世代の同僚との競争や刺激の方が成長を後押しするという側面が大きいと思います。同期や同僚がお互い切磋琢磨していくことで自然と成長していく面を軽視すべきではありません。ところが、少人数規模の組織だと、こうした同期や同僚の人数が非常に少ないのです。


外資系運用会社への就職や転職を目指す人は、組織の規模、日本法人の役割、若手の育成方針、年齢構成、トップのバックグランドなどの情報を、OB訪問や転職エージェント、LinkedIn、口コミなど、使える情報源はめいっぱい使って会社内部の空気を掴んでほしいと思います。



日本法人の内部に運用部門を置いている会社も少なくありませんが、運用の対象は主に日本株式や国内債券です。一方、海外の伝統的資産(株や債券)やオルタナティブ資産(プライベートエクイティや不動産など)の運用は、海外の本社や関連会社に委託しています。

そのため、日本法人の中心業務は営業部門、特に保険、銀行や年金基金などの機関投資家ビジネスが中心になります。機関投資家は、顧客数こそ多くはありませんが、一社あたりの投資額が大きいため、少人数でも効率的にビジネスが成立すします。



外資系アセットマネジメントの機関投資家ビジネスは、主に生保や銀行などの金融法人と企業年金や公的年金が対象です。特に生命保険の資産(責任準備金)の大部分は有価証券で占められているほか、資産規模も大きいため、運用会社にとっては大きなビジネスチャンスになります。

企業年金の場合、DB(確定給付年金)が主な対象となり、かつては大きなマーケットを形成していました。しかし、DBからDC(確定拠出)への移行が進んでいるため、ここ数年の市場規模は縮小傾向にあります。

一方、日本の公的年金の積立金を管理・運営するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、300兆円規模の運用資産を擁する巨大な存在です。外資系運用会社にとって、GPIFからの契約獲得は運用残高(AUM)を飛躍的に拡大する極めて魅力的なビジネスチャンスである一方、解約時のインパクトは、会社の存続に影響しかねないほど大きくなります。公的年金には、GPIFのほか、地方公務員共済組合連合会や国家公務員共済組合連合会などがあります。

余談になりますが、年金ビジネス(公的・企業年金)では投資一任契約のスキームが一般的ですが、金融法人の場合は、海外籍ファンドへの直接投資、あるいはタックスヘイブン※などに組成した自社ファンド(口座)傘下のアンブレラファンド※を通じてその運用者(investment manager)として運用会社を指名する形が主流となっています。この辺りの事情は極めて複雑なので、またの機会に詳しく触れたいと思います。

※タックスヘイブン:租税回避地のことで、法人税や所得税などの一定の税率が著しく低い、または免除されている国や地域のこと

※アンブレラファンド:一つのコアとなるファンドの下に投資対象や運用方針の異なる複数のファンドを設ける仕組み



日本には2,000兆円を超える個人金融資産が存在し、外資系運用会社にとっても日本ビジネスの拡大を目指すのであれば無視できない市場です。しかし、このリテール(個人向け)ビジネスは非常に労働集約的で、販売会社の支店向けの勉強会開催など、とにかく人手がかかるため、外資系の少人数体制では対応しきれません。

そこで有効な戦略となるのが、「サブアドバイザリー・ビジネス」というビジネスモデルです。外資系運用会社が強みを持つ外貨建て資産やオルタナティブ資産の運用や助言を日系運用会社に提供する見返りとして、日系運用会社がもつ強固な販売ネットワークを活用します。

日系運用会社にとっても、インハウス(自社)でカバーしきれない運用領域を外資系の専門知見で補完できるため、両者は「Win-Win」の関係を結ぶことができます。そのため、外資系運用会社の営業担当者は、信託銀行をはじめとする日系運用会社へのアプローチが中核業務の一つとなります。



日本における外資系アセットマネジメントの進出履歴は一様ではありません。国内で40~50年の実績をもつフィデリティ投信やシュローダー・インベストメント・マネジメント、インベスコ・アセット・マネジメントといった老舗がある一方、進出後10年に満たない振興の運用会社も少なくありません。

当然ながら、こうした歴史的な経緯や企業規模の違いによって、各社の具体的なビジネス展開には濃淡がありますが、この記事で紹介した以下の内容は、多くの外資系アセットマネジメントに共通する構造と言えるでしょう。


本記事の要約

  • 外資系運用会社(日本法人)の企業規模は多岐にわたるが、多くはシンガポールなどのアジア地域統括拠点の指揮下に置かれている。

  • 特に中小規模の組織では、即戦力人材の確保にリソースが集中しやすく、若手育成へのインセンティブが働きにくい。

  • ビジネス展開においては、生命保険などの金融法人やGPIFに代表される公的年金を対象とする機関投資家ビジネスが中核とする会社が多い。以前は大きなマーケット規模を形成していた企業年金は縮小傾向にある

  • 一方、労働集約的なリテールビジネスに対しては、「サブアドバイザリー」というモデルを採用。信託銀行をはじめとする日系運用会社へ、海外資産やオルタナティブ資産に関する専門知見を提供することで、効率的に市場へアクセスしている。

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