営業の構造化アプローチ(第5回)
第1回:営業の悩みは”構造×思考”で解決できる
第2回:営業の再現性が失われる理由
第3回:バラバラの営業を再現可能な型に変える方法
第4回:営業をステージで設計する
第5回:営業の構造化が失敗する3つの理由(この記事)
第6回:営業ステージを分類する具体的な方法
営業を構造化しようとすると、多くの現場で同じような「つまずき」が起こります。これは方法論が難しいからではなく、既存の営業文化や思考習慣と衝突するポイントが必ず存在するからです。
本記事では、前回記事( 関連記事 「営業をステージで設計する」)で紹介したメリットを踏まえつつ、構造化アプローチ導入時に起こりやすい3つの課題を整理します(構造化アプローチのメリットについては、以下にもう一度挙げておきます)。

Q:構造化アプローチがつまずきやすいポイントは?
ここでは営業の構造化アプローチの課題について説明します。大きくは次の3つが考えらます。
❶ 施策が「自己目的化」しやすい
構造化アプローチの本質を理解せず進めてしまうと、各施策を「こなすこと」が目的となってしまい、形式主義的な罠に陥りやすくなります。これこそが構造化アプローチが直面する大きな課題です。
このため、構造化アプローチ導入の理由を理解しない営業担当者にとっては、「やらされ感」が強まり、本来の目的(顧客理解や仮説精度の向上)が達成されず、実効性のある浸透が困難になるという悪循環が生まれます。
❷ 時間的な制約による不十分な対応
構造化アプローチを進めるためには、自身の顧客に関する情報収集、課題分析、仮説の立案、施策の検討、振り返り・反省の思考サイクルを回すことが必要となります。
しかし、これらをレポートや社内会議という形で具現化しようとすると、どうしても作業負担が増え、営業担当者からは「過剰な作業だ」「作成に割く時間がない」という不満が生まれやすくなります。
❸ 導入と効果に時間がかかる
フレームワークの構築自体はそれほど時間を要するものではありませんが、組織内に構造化アプローチに不慣れが人がいると、その理解には時間がかかり、また組織内での浸透・定着も一朝一夕には進まない可能性があります。
また、営業テクニックとは異なり、導入後すぐに効果が表れるものでもないため、導入の効果を体感する前に形骸化してしまうリスクもあります。
以上は、構造化アプローチの導入において、私自身が直面した問題です。フレームワークに基づく各種施策は営業担当者に一定の制約を課すことになりますので、今まで通り自由にやりたい中堅の営業担当者にとっては苦痛でしかないでしょう。表面上は理解しているような営業担当者でも、構造化アプローチの根本的な理解が欠けていれば、一見フレームワークに沿った施策を考えるものの、中身は非常に薄いものになりがちです。このような背景から、構造化アプローチの組織内の導入には時間がかかるのです。
Q:構造化アプローチを組織に定着させるために必要なステップとは?
構造化アプローチの導入には、このような課題が伴うのは事実です。導入には時間がかかるため、導入途中で形骸化したり、効果が表れるまで待てず自然消滅したりすることも少なくありません。そうならないためにも、導入時には以下の対応を導入時から徹底すべきではないかと考えます。
❶ プラットフォームの慎重な設計と運営
構造化アプローチを「概念(コンセプト)」で終わらせないためには、実際の施策や会議等の運営インフラ(=プラットフォーム)の設計と運営が非常に重要になってきます。
現状からかけ離れたプラットフォーム・施策だと不満が生まれやすくなります。逆に、現状に寄りすぎると、営業フレームワークの目的からの乖離が生じてしまい、「何のための施策なのか?」等の不満が生じやすくなります。このバランスを見極めながら、現実的かつ目的に沿ったプラットフォーム運営が求められます。
❷ 営業担当者の理解と、一定の強制力
構造化アプローチの導入はプラットフォームという運営インフラの設定によって具現化されますが、営業担当者の理解が浅いままでは、施策はすぐに自己目的化します。この問題を払拭するためには、構造化アプローチへの理解を継続的に進めていかねばなりません。
また、プラットフォームの設定は施策のルール化(制約)が伴うほか、導入効果にも時間がかかることから、次第に営業担当者には不満が醸成されやすくなります。中堅以上の営業担当者ほど、「自分は営業成績をあげているのだから不要」という態度が現れるのも時間の問題です。このため、ルールを遵守させる仕組みが必要になり、モニタリングの方法も効果的、実務的な方法が必要となります。

まとめ
構造化アプローチの導入には多くのメリットや効果がある反面、導入に際しては❶各種施策が目的化しやすい、❷時間的制約により不十分な対応となる、❸導入と効果に時間がかかる、といった課題が伴います。だからこそ、導入の際には、現状を踏まえつつも目的を見失わないプラットフォームの設計と、営業担当者の理解促進および一定の強制力・モニタリング管理が導入成功の鍵となります。
構造化アプローチは「型(フレームワーク)」を押し付けるものではなく、営業を再現可能にし、組織として強くなるための基盤作りです。その本質を共有しながら、着実に浸透させていくことが大切です。


