情報は情報にすぎないーーー。
私は、営業の本質は「高品質な情報」を取ることだと考えています。しかし、情報を集めただけでは、それらは依然として”情報”の域を超えません。情報が価値を持つのは、その情報に対して私たちが何らかの意味付けや解釈をするからです。
情報の構造
例えば、顧客企業で某役員の異動があったとしましょう。営業担当者がその情報を重視するのは、役員異動という事実そのものではなく、そこに何かしらの意味や兆候を読みとるからです。「なぜ、このタイミングで役員異動が発生したのだろうか?」という問いや、「この役員異動は、近々、組織改編が起きる前兆ではないか」という仮説があり、それらの視点から当該情報を捉えていると言えます。
逆に、「相手企業の社長が最近マラソンにハマっている」という情報を入手したとしても、それが同社に対する営業戦略に影響しないのであれば、その情報はただ存在するだけで、価値は生まれません。
どんな情報であっても、そこに問いや仮説がなければ価値をもたないのです。ですから、価値ある情報を取りに行くためには、事前の疑問設定や仮説構築が不可欠になります(高品質な情報をどう収集するかについては、( 関連記事 ▶『質の低い情報はいらない!|「高品質」な情報の集め方』をご覧ください)。
ただし、気を付けなければならないのは、仮説を立てるという行為は、情報の解釈にバイアスを生みやすいという点です。仮説をもつ以上、バイアスを完全にゼロにすることは不可能です。しかし、「自分は今、特定のメガネをかけて事実を見ているのだ」という自覚をもつことで、その影響を最小限にとどめることができます。
情報の分析と仮説構築
収集した情報を的確に分析することは、重要情報に着目すること以上に重要です。ひとつの情報(親情報)は、いくつもの要素(子情報)で構成されています。先ほど例に挙げた「某役員の異動」で言えば、異動の時期やタイミング、異動元と移動先、役員の経歴、他役員と異動状況など、複数の要素が当該情報には含まれています。
これらの要素をもとに、「なぜ、この役員が異動になったのか」という仮説を立てます。ここでの仮説とは、年齢、経歴、在職年数、異動元などの要素から、どのような部署へ異動する傾向があるかを推論することです。そして、その推論が他の役員異動にも一般化できるのであれば、その仮説の価値はさらに高まります。
仮説構築・検証には、帰納法、演繹法、アブダクションなどの複数の方法がありますが、営業現場の経験からは、各要素間の関係性を捉えるアプローチが有効だと考えています。役員異動という一見単純な事象であっても、単一の要因で決まることは少なく、複数の要素が相互に影響しあう「構造」として理解する方が、より現実に即した仮説を構築できると思うからです。
このアプローチでは、まず要素がどのように関連・連動しているのかを分析し、その関係性の中からどの要素が結果を左右する鍵となるのかを見極めます。鍵となる要素を特定できれば、仮説の焦点が定まり、検証の精度が高まります。このプロセスを経ることで、役員異動という情報の背後に潜んでいる重要なメッセージを見出すことが可能になります。
自分なりの仮説構築方法
こうした仮説検証や創造的思考は、まさに「論理学の領域」であり、数多くの文献が存在します。論理学では普遍的な枠組みを提供してくれますが、営業の現場では、扱う情報の性質や意思決定のスピード感が異なるため、これらの文献を参考にしつつも、自分が扱う情報の種類や業界特性に即した「自分なりの仮説構築」の方法をつくっていくことが重要になります。体系的な知識と現場の経験を何度も往復しながら、自分だけの仮説構築プロセスを磨いていくことで、情報から洞察を引き出す力を高めたいものです。

