営業の構造化アプローチ(第7回)
「ひと通り自社の商品一覧を説明したが、その後に何をすべきかがよくわからない」、「ショートリストまでたどり着いたが、商品の詳細説明を続けていてよいのだろうか…」
そんな営業担当者の悩みを解消すべく、営業プロセスの適切な段階に適切なアクションを起こすための『営業プロセス構造化ロードマップ』を解説します。
1. 本記事の目的と効果
本記事では、30年超の法人営業経験における知見をもとに、アプローチの初期段階から成約、そしてその後の解約防止に至る「6つの全ステージにおける代表的な実務アクション」を網羅的な設計図として俯瞰します。
各ステージの境界線を明確にし、今自社がどの立ち位置にあり、次に対処すべき障害や課題が何であるかを特定するための思考プロセスを提示します。これらを体系的に理解することで、営業活動の個人商店化(属人化)を根本から防ぎ、組織として再現性の高い成果を生み出すための強固な共通言語を身につけることができます。
場当たり的な営業活動を避け、すべての営業ステージを戦略的にドライブさせるための「構造化ロードマップ」の全体像を、ぜひ実務の羅針盤としてお役立てください。
本シリーズでは、営業プロセスを以下の6ステージに分けて解説しています
❶ 潜在顧客の探索
❷ 見込み客への絞り込み
❸ 商品提案
❹ 成約に向けた障害の特定と解決
❺ 成約
❻ 関係維持・解約防止

2. 6つの各ステージにおける適切なアクション
業種やビジネス慣行によって細部は異なりますが、ここでは一例として、各ステージで求められる代表的なアクションを紹介します。
❶ 潜在顧客の探索(Prospecting)
初回面談に向け、情報収集から実際のコンタクト方法までを行う段階。まだ面識のない潜在顧客との接点を作り出し、初回面談に繋げるための最初のアクションです。考えられる手段を広く洗い出し、より効果的なオプションを模索する段階。
| アプローチ手法 | 具体的なアクション |
|---|---|
| 公開情報等による抽出と絞り込み | 公開情報などを活用して条件に合致した企業を洗い出す |
| コールドコールの実行 | 代表電話番号へ飛び込み連絡を行い、初回面談の獲得を試みる |
| イベント・外部ネットワークの活用 | 過去のイベント参加などで多少の接点がある顧客への電話やメールでのアプローチを試みる |
| 他部署からの紹介(リファラル) | すでに面識のある他部署(自社・他社)の担当者から紹介を受ける |
❷ 見込み客への絞り込み(Qualifying)
初回面談に至った顧客の中から、ビジネスとして進展が見込める相手を見極めるステージ。商品紹介に急がず、顧客に関する情報収集と分析が鍵となる。
| 主要プロセス | 具体的なアクション |
|---|---|
| 顧客の課題と潜在的ニーズの把握 | 公開情報や直接のヒアリングをもとに、顧客が抱える課題や顕在化されていないニーズを掴む |
| 取得情報の分析、仮説構築・検証 | 取得した情報を分析し、顧客の課題についての仮説をたて、それをもとに更なる情報収集を行う |
| 継続アプローチによるニーズの顕在化 | 以上のサイクルを経た後に、潜在ニーズに合う商品を絞り込んでいく |
❸ 商品の提案(Proposal)
正式なプレゼンテーションであれ、担当者への非公式な商品紹介であれ、ようやく自社商品を紹介できるステージ。顧客ニーズと提案内容の整合性を保ち、適切なメッセージをストーリーとしてを伝えることが重要。
| 主要プロセス | 具体的なアクション |
|---|---|
| 提案商品と顧客ニーズとのギャップの把握 | 顧客ニーズを100%満たす商品の存在は稀。ギャップを把握し、対策を考える |
| 自社商品の強味を訴求 | 「我田引水」的な説明を回避するため、訴求ポイントは複数準備し、顧客に「刺さる」ポイントを繰り返し説明する |
| 競合分析 | 競合するライバル社とその会社が提供する商品との相違点と差別化ポイントを幅広く比較考量する |
| 一貫したメッセージングの設計 | 我田引水に陥ることなく、商品提案全体を貫くメッセージを特定し、理解しやすいストーリーを構築する |
❹ 成約に向けた障害の特定と解決(Handling Objection)
成約確度を高めていく極めて重要なステージであり、敗因の可能性の高い要素から優先的に繰り出すことが大切。法人営業(B2B)では意思決定プロセスが多層的なことから、提案後のプロセスが長くなりがち。この段階での対応が勝敗を左右するといっても過言ではない。
| 主要プロセス | 具体的なアクション |
|---|---|
| 提案後の情報収集とフォローアップ | 提案の場で出た相手の質問や疑問に答えるだけでなく、その背景にある懸念を探るための情報収集を継続し、適切なフォローアップを行う |
| 障害要因・交渉ポイントの洗い出しと特定 | 致命傷となりうるファクターをできるだけ多く洗い出し、重要度を特定する |
| 解決策の準備と実践 | 上記の解決策についても複数準備し、優先度の高いものから実践していく |
❺ 成約(Closing)
商品購入が内諾された後、契約締結や納品をスムーズに進めるためのアクション。営業はオンボーディングの「差配者」として機能する必要がある。
| 主要プロセス | 具体的なアクション |
|---|---|
| 社内リソースの差配 | 社内の関連部署を成約に至るまでの経緯や顧客ニーズを漏らすことなく伝え、必要な社内リソースを効率的に活用する |
| 外部委託先との連携と進捗管理 | 一部を外部に委託している場合も、連絡を密にし、責任をもって作業工程を確認する |
| 期待値コントロール | 商品に付随するアフターサービス(または顧客サービス)や、定期的な報告が求められている場合の内容について確認すると同時に、後からの要望肥大化(スコープクリープ)を防ぐため、サポート範囲を明確に可視化する |
❻ 関係維持・解約防止(Retention)
長期的な契約維持、解約防止、トップアップ・クロスセルを狙うためのステージ。長期対応となるため、継続的かつ計画的なアプローチが求められる。
| 主要プロセス | 具体的なアクション |
|---|---|
| 係構築・深耕 | 関係を深めることで、潜在的な顧客の新たなニーズを見出すだけでなく、不満や懸念を早期に把握する |
| ダメージコントロールの徹底 | 顧客からの潜在的な不満や懸念に対し、その背景にまで理解を薦め、丁寧かつ誠実な対応を図る |
| 計画的な追加提案 | 関係構築とダメージコントロールを土台に、これまで培った信頼関係をレバレッジ(活用)し、追加成約の確度を高める |
3. 現場経験から(コラム)
現場経験から言えること
営業プロセスが複数の要素で構成されていることを正しく理解していないと、目の前のアクションが的外れになったり、次の一手が見出せず五里霧中に陥ったりしてしまいます。
私自身、長年の試行錯誤を経て「要素」=「営業ステージ」と捉え、ステージごとに取るべき行動を明確に定義したことで、本記事で紹介する独自のプロセスを確立しました。さらに、各ステージで検討すべき項目をあらかじめ固定し、必要なアクションの漏れを徹底的に防ぐことで、営業の再現性を確保しています。
このように構造化を推し進めた結果、成約の確率が高まっただけでなく、万が一失注した場合でも「敗因がどのステージのどの項目にあったのか」を容易に分析・特定できるようになりました。ぜひ本記事を参考に、ご自身の営業プロセスの構造化に取り組んでみてください。
4. まとめ
以上が、営業プロセス6ステージにおける代表的な必須アクションの全体像です。
営業組織の再現性を高めるためには、この全体像を俯瞰した上で、自社のビジネスモデル(SaaS、金融、製造業など)に合わせて各ステージのアクションをカスタマイズし、構造化された「考え抜く姿勢」で実践していくことが不可欠です。
▼ 営業の構造化アプローチを体系的に学ぶ
本記事は、営業プロセスを構造化し、再現性のある営業成果を実現するための連載シリーズです。初期フェーズから解約防止に至る全プロセスの全体設計図は、以下の一覧ページにすべてまとめています。


