本記事を開いてくださった方は、すでに「構造化」という言葉をご存知か、少なからず関心をお持ちのことと思います。この「構造化」ですが、ビジネスシーンでは以前から提唱されてきた概念のようです。
私自身の性格でもあるのですが、物事を漠然と考えるのがとても苦手で、せっかく結論を出してもずっと消化不良な気分が続いていました。それが嫌で試行錯誤を繰り替えした結果、「物事をある基準で要素に分解し、その関係性から全体像を把握する」という方法を思いついたのです。実は、それこそがまさに「構造化」だったのです。
「構造化」と聞くと、どこか学術的で取っつきにくい印象を持たれるかもしれません。現場の営業パーソンからすれば、「いかにも机上の空論」と感じる方もいるでしょう。
しかし、その本質は極めてシンプルかつ有用です。構造化とは、「物事をある基準に基づいて分解し、実務アクションを定義していく」という、非常に実践的で強力な思考法なのです。
この記事では、日々数字や顧客対応に追われる営業パーソンに向けて、思考を具現化し、成果につなげるための具体的な「営業の構造化」をわかりやすく解説します。
1. そもそも「構造化」とは?
「構造化」とは、簡単に言えば、「情報や事象など、あらゆる”物事”は何らかの要素で構成されていると考え、その構成要素に分解し、その関係性を整理し、配置していくこと」です。簡単に表現したとはいえ、それでも小難しい内容ですよね?でも、一度マスターすれば、とても汎用性の高い、使い勝手のよい思考法なのです。
ここで、よく混同されやすい「体系化」との違いについても触れておきます。正直なところ、この2つの整理は、論者によっても解釈がマチマチなのですが、一般的には次のようなイメージで捉えてみてください。
▶ 構造化のイメージ
ひとつの対象を細かく分解し、各パーツの関係性を紐解くことで「全体の仕組み」を把握すること
▶ 体系化のイメージ
独立した複数のパーツを共通のルールで統合して、一つの大きなシステム(体系)を構築すること
このように「構造化」は全体から個へとアプローチするトップダウン型であるのに対し、「体系化」は個から全体を構築するボトムアップ型の意味合いを持ちます。
私が本ブログで解説する「構造化」は、あえて言えば「広義の構造化」と言えます。単に一つの対象を分解する(狭義の構造化)だけでなく、バラバラの要素を意味のある構造に組み上げて、ひとつのシステムを作り上げる(体系化)までの一連の思考プロセスです。これを本ブログでは「構造化」と定義して進めていきます。
少々、複雑な説明になってしまったので、ここで整理します。3つの関係は以下のようになっています。
- 構造化(狭義): ある対象を複数の要素に分解し、要素間の関係性(因果関係・主従関係)を明らかにすること
- 体系化: バラバラに存在する複数の要素を、「共通のルール」に従って1つの大きな仕組みにまとめ上げること
- 構造化(広義):「要素への分解」から「仕組みへの再構築」までの一連のサイクルすべてを指す包括的な概念

2. 営業における「構造化」
このような「構造化」の定義を、営業の文脈で表現すると、次のようになります。
営業の構造化とは…
複雑かつ長期の営業プロセスをさまざまな側面から要素に分解し、そこから成約に向けた具体的なロードマップを作成、具体的なアクションの道筋を明確化していくこと
個々の営業担当者の活動が合理的であっても(「部分最適」)、その集合が必ずしも全体戦略(「全体最適」)に沿ったものになるとは限りません。全体を俯瞰する視点が必要です。
構造化の目的は、現場の営業担当者個人と営業組織の双方に明確な行動基準を設けることにあります。
課題 :部分最適
各営業担当者が、それぞれの経験や営業テクニックのみに依存した活動を行うことで、組織全体の効率性が著しく低下し、ブラックボックス化してしまうリスクがある
効果:全体最適
構造化を推し進めることで、個人のプロセスを可視化するだけでなく、組織として営業活動をどのようにデザイン・設計していくかの明確な基準が確立される
つまり、営業プロセスを細かく分解して「何が構成要素になっているのか」を特定する、いわば「営業活動の棚卸しと整理」を行い、次にそれらの要素を組み立てて強固な仕組みへと転換する作業が必要になります。
コラム|Structured Sales Approach
「営業の構造化」は、海外では”Structured Sales Approach”として知られています。一般的には次のように説明されています。
” A structured sales approach is a documented, step-by-step framework that guides sales teams from prospecting to closing, replacing improvisation with a repeatable process.”
(”構造化された営業アプローチとは、見込み客開拓からクロージングまでを導く、文書化されたステップバイステップのフレームワークであり、行き当たりばったりの営業を、再現可能なプロセスへと置き換えるものである。”)
即興(inprovisation)は、ジャズのアドリブ演奏にも使われる言葉ですが、アドリブが命のジャズと違って、営業においては、担当者個人の臨機応変な対応は評価されないということですね。
3. 営業プロセスをどのように分解するのか?| 基準の選び方
営業を構造化する目的は、営業プロセスや活動を複数の「構成要素」へと分解し、一気通貫した統一性のある戦略(仕組み)を構築すること、そして各構成要素に応じて最適なアプローチやアクションを可能にすることにあります。
分解の切り口としては、営業段階(営業ステージ)が一般的ですが、組織の目標や課題に応じて、「機能」や「組織」、「セグメント」等、最適な軸で基準を設定することが重要です。
私の経験では、やはり「営業ステージ」がもっとも理解されやすいので、これまでも営業ステージを構成要素をした構造化アプローチを推進してきました。
法人ビジネスでは、営業ステージを切り口に分解することが最適な理由
法人営業では、①ステークホルダー(利害関係者)が複数あり、②意思決定のプロセスが長期かつ複雑であるという特徴があるため、長期にわたる営業プロセスを複数のステージに分解して、これを構成要素とするのが一般的です。このステージ管理を「ロードマップ」という形で可視化し、そのプロセスに沿って適切な対応や会話、提案、アクションをすることで、営業は行き当たりばったりから、再現可能なプロセスへと変わっていくことが期待できます。
4. まとめ
「構造化」は、複雑に絡み合った情報や事象を、特定の基準で紐解き、それらを整理すことで、ひとつの新たな仕組みを作り上げる一連のプロセスです。個人の経験や勘に頼りがちな営業活動において、このアプローチは、組織的な営業活動の再現性を高めるために極めて有用な方法なのです。本記事でご紹介した基本をベースに、まずは身近な業務の分解から始めてみると面白いと思います。
本記事の要約
- 構造化とは、情報や事象など、あらゆる”物事”は何らかの要素で構成されていると考え、その構成要素に分解し、その関係性を整理し、配置していくこと
- 担当者個人による「部分最適」な営業から、全体を俯瞰する「全体最適」な組織営業へと転換することが「営業の構造化」の目的である
- 構造化の切り口(基準)は、組織の目標や課題次第だが、営業プロセスが複雑かつ長期にわたる法人ビジネスにおいては、「営業ステージ」が最適である
営業プロセスを構造化して終わりではありません。構造化の本質は「思考プロセス」そのものにあります。
プロセスを分解する過程では数多くの「なぜ」を突き詰める必要があり、構造化した後も、各ステージにおいて徹底して思考し続けることが求められます。
構造化の先にある「思考し続ける営業組織」への第一歩として、まずは身近な業務の分解から始めてみませんか?





この記事でわかること