営業の構造化アプローチ(第3回)
「構造化」という概念自体は決して新しい考え方ではなく、古くから様々なビジネスシーンで提唱されてきました。論者によってその定義は微妙に異なりますし、馴染みのない方にとってはどこか取っつきにくい学術的な響きに聞こえるかもしれません。
しかしその本質は、物事をある基準に基づいて分解し、それに即して実務アクションを定義していくという、極めてシンプルかつ合理的な思考法です。
1. 本記事の目的と効果
本記事では、30年超の法人営業経験における知見をもとに、営業プロセス設計の前工程ともいえる「体系化」と、それを具体的なロードマップへと昇華させる「構造化」の決定的な違いに焦点を当てます。
抽象的な概念の輪郭をクリアに整理しながら、最前線の営業活動へ真に組み込むための実践的なアプローチを解説します。個人のセンスやテクニックに依存した営業から脱却し、組織として一貫した成果を生み出すための「強固な共通フレーム」を構築するための要諦を体系的に理解することを目指します。
2. 体系化と構造化の違い
体系化と構造化には、バラバラな情報を分類・統合し、それをもとに実務の道筋を設計するという、それぞれ独自の役割が課せられています。まずは、その決定的な違いを整理しておきましょう。
a. 体系化:要素を見つける工程
あらゆる情報は、そのままの状態では単なる「点」にすぎません。この散らばった点を分類し、点と点を結びつけることによって組織内の関係性を明らかにするのが、体系化というファーストステップです。
定義
体系化とは、バラバラに存在する情報を整理し、共通性や関係性に基づいて構成要素へ分類・統合すること。
目的
個々の営業担当者が実践している行動を分解・整理することで、営業プロセスを構成する要素を明らかにする
例えると…
バラバラに散らばった情報を全体の広がりとして俯瞰できるよう位置づけることから、「地図づくり」と言える
b. 構造化:要素を繋げて仕組みにする工程
一方で構造化とは、体系化によって綺麗に統合された情報(地図)を土台とし、成約へ向けた具体的な「ロードマップ」やアクションの道筋を明確化していくアプローチを指します。
定義
構造化とは、体系化によって整理された情報の構成要素を分析することで、それらの関係性・共通性を明確にすること
目的
統合された要素を相互に関連付け、因果関係や流れを分析することで、プロセスがフレームワークとして機能する仕組みをつくる
例えると…
体系化で作った静的な地図を動的な流れ、つまり「ロードマップ」に組み立て、ビジネスをどう進めるかの道筋を決める作業

3. 体系化と構造化の役割と効果
個々の営業担当者の活動の集合が必ずしも全体戦略に沿ったものになるとは限りません。体系化と構造化は、営業担当者個人と営業組織双方に明確な行動基準を設けることを目的としています。
課題 :部分最適
各営業担当者が、それぞれの経験や営業テクニックのみに依存した活動を行うことで、組織全体の効率性が著しく低下し、ブラックボックス化してしまうリスクがある
効果:全体最適
体系化と構造化を推し進めることで、個人のプロセスを可視化するだけでなく、組織として営業活動をどのようにデザイン・設計していくかの明確な基準が確立される
営業プロセスを細かく分解して「何が構成要素になっているのか」を特定する、いわば「営業活動の棚卸しと整理(=体系化)」を行い、次にそれらの要素を組み立てて強固な仕組み(=構造化)へと転換する作業が必要になります。
4. Structured Sales Approach(構造化された営業)とは?
「営業の構造化」は、海外では”Structured Sales Approach“として知られています。
一般的には次のように説明されています。
What is a structured sales approach?
A structured sales approach is a documented, step-by-step framework that guides sales teams from prospecting to closing, replacing improvisation with a repeatable process.
(構造化された営業アプローチとは、見込み客開拓からクロージングまでを導く、文書化されたステップバイステップのフレームワークであり、行き当たりばったりの営業を、再現可能なプロセスへと置き換えるものである。)
見込み客の獲得から成約(マンデート獲得)までの手順を定義、標準化し、一貫性のある再現可能なものにする手法のことです。当ブログで紹介するのは、一般的な(難解な?学術的な?)理論ではなく、私自身の経験に基づく構造化アプローチです。
5. 営業活動をどう分解するのか?
構造化の目的は、営業を複数の構成要素に分け、各構成要素に応じて適切な対策を打てるようにすることにあります。構成要素としては段階(ステージ、フェーズ)が一般的ですが、機能や組織、セグメント等、他の軸で分けても構いません。
法人営業ではステージを構成要素とすることが最適な理由
法人営業では、①ステークホルダー(利害関係者)が複数あり、②意思決定のプロセスが長期かつ複雑であるという特徴があるため、長期にわたる営業プロセスを複数のステージに分解して、これを構成要素とするのが一般的です。このステージ管理を「ロードマップ」という形で可視化し、そのプロセスに沿って適切な対応や会話、提案、アクションをすることで、営業は「行き当たりばったり」から「再現可能なプロセス」への変わっていくことが期待できます。
6. まとめ
営業活動の「体系化」と「構造化」は、どちらか一方を切り離して成立するものではありません。個々の担当者が持つ暗黙知や行動の断片を洗い出して整理する静的な「地図づくり(体系化)」を経て、それを成約へ向けた動的な「ロードマップ(構造化)」へと組み立てることで、プロセスは初めて真の力を発揮します。
属人的なセンスや場当たり的なテクニックに依存する営業から脱却し、組織全体の投資効率と再現性を最大化することこそが、このアプローチの目指すべきゴールです。
次回からは、この強固な共通フレームを土台とし、具体的に営業プロセスをどのような「ステージ」に分解し、最前線でどのような実務アクションを展開すべきなのか、より実践的な各論ロードマップへと踏み込んでいきます。組織の営業力を底上げするための確かな一歩を、ぜひ共に進めていきましょう。
▼ 営業の構造化アプローチを体系的に学ぶ
本記事は、営業プロセスを構造化し、再現性のある営業成果を実現するための連載シリーズです。初期フェーズから解約防止に至る全プロセスの全体設計図は、以下の一覧ページにすべてまとめています。


