営業を長く続けていると、営業活動がいつの間にか「作業」へと変質し、本来の目的が忘れ去られてしまうことがあります。いわゆる「目的と手段の混同」です。
組織営業では営業プロセスを体系化することで再現性が高まると考えますが、同時に”定型化による思考停止”という副作用のリスクを孕んでいます。だからこそ、「何のための活動か?」を常に自問し続ける姿勢が不可欠です。
私が現場で何度も直面した例があります。
顧客との関係構築は、担当者同士だけでなく、シニア層、役員層へと多層(レイヤー)で広げていくことが重要です。そのため、顧客側の役員が交替すると、自社の役員による表敬訪問を上司が指示することが通例です。これは多くの組織で”定型化した営業活動”として行われていると思います。
しかし、面談のアポイントメントが必ず取れるとは限りません。その際、上司からは「日頃の関係構築が出来ていない」と叱責されることがあります。
私は、これこそが目的と手段の混同だと考えます。つまり、「役員と会うこと」が目的化してしまっているのです。役員との面談そのものは、それほど重要ではありません。本当に重要なのは、「会えない理由」にこそ重要なメッセージが潜んでいるという点です。顧客組織のレイヤー構造を踏まえると、会えない理由は大きく3つに整理できます。(顧客組織のレイヤーが多層になるほど、さらに複雑化します)。
- そもそも、営業担当者が顧客側の担当者に面談を申し入れていない
- 顧客側の担当者が何らかの理由で自社役員との面会申し入れを止めている
- 顧客側の役員が何らかの理由で面会を承諾しない
❶は論外としても、❷と❸が理由であれば、そこに重要なシグナルが隠されている可能性が高いと考えるべきでしょう。

この隠れたメッセージを読み解くことこそ、営業の本質的な仕事です。顧客側の担当者への非公式なアプローチ(ランチやディナー等)、顧客側の別の担当者や別部署へのヒアリング、同業他社からの情報収集など、最も確度の高い方法を自ら考え、動く必要があります。
面談はあくまで「手段」であり、「目的」ではありません。だからこそ、そもそも役員面談にどんな意味があるのかを問い直すことで、異なるアプローチや新しい手段を発想できるようになります。


