時間をかけ、ようやく勝ち取った契約──いわゆる“マンデート”。 営業担当者にとって、その達成感は格別です。
では、その成約に対して 営業担当者はどれほど貢献しているのか。 商品力なのか、ブランド力なのか、それとも営業の働きなのか。 この問いは、営業に携わる者なら一度は考えるテーマでしょう。
1. 本記事の目的と効果
本記事では、私が30年以上の法人営業で培ってきた経験をもとに、営業担当者の“貢献度”を改めて考えてみます。
営業担当者の貢献は、実は限定的です。しかし、その“限られた部分”を 毎回確実に積み上げることができるかどうか が、営業としての真価を決めます。そして、そのために不可欠なのが、属人的なセンスではなく 構造化と思考の質 です。
この記事が、あなたの日々の営業活動を見直し、成果の再現性を高めるきっかけになれば幸いです。
2. ケーススタディ
以下は、多少デフォルメしていますが、私自身の実際の体験に近い内容です。
X社のケース
初めてX社を訪問した際、コールドコールでアポイントを取ることができた時点で、緊張と期待が入り混じっていました。
先方の担当者は初対面にもかかわらず丁寧に対応してくださり、私は自社の特徴を説明したところ、先方の担当者は「なるほど、次回は具体的な提案を聞かせてほしい」と前向きな反応を示し、次回の打ち合わせを約束してくれました。
翌週、商品担当者とともにX本社を再訪し、先方の関心の高かった商品のプレゼンテーションを実施しました。質問は2、3程度で、40分ほどで終了。
1週間後、X社から「貴社の商品を採用する」と連絡が入りました。上司や同僚からは「おめでとう!」と祝福されましたが、私自身はどこか気恥ずかしさを覚えていました。努力して勝ち取ったというより、単に商品が良かっただけではないかと。
Y社のケース
この実績が評価され、次は大手Y本社の新設部署への売り込みを任されました。X社のときと同様に、コールドコールで訪問し、先方から「現在、探している商品」を探り出し、翌週にプレゼンテーションを実施しました。
初回訪問では上席を含む3名が参加していたのに、プレゼンテーション当日は上席は欠席し、部下の2名のみ。X社の時と比べても、その空気の違いは明らかでした。
翌週、自ら状況確認の連絡を入れるとーーー先方からは「良い商品だが、すでに複数社から同様の提案があり、貴社の商品については、今回は見送るよ」と体よく断られてしまいました。
このような経験は、誰しもあるではないでしょうか?X社では簡単に決まったのに、Y社ではうまくいかなかった。何がいけなかったのでしょうか?この2つの結果にはどんな違いがあったのでしょうか。
3. 運任せの営業
今回の2つの結果の違いは、非常にシンプルです。
X社では、ちょうど探していた商品に自社の提案が合致していた。一方、Y社ではすでに他社商品で検討が進んでいた──それだけのことです。
つまり、成否を分けた主因は 商品力とタイミング であり、営業担当者の貢献度は限定的だったと言えます。もちろん「ほぼゼロ」というのは少し極端ですが、このような営業の進め方では、結果が“運”に左右されやすいのは事実です。
では、営業担当者がやるべきことをすべてやったとして、どこまでが商品力・ブランド力の影響で、どこからが営業担当者の貢献なのでしょうか。 明確な答えはありませんが、長年の法人営業の経験からすると、営業担当者の貢献度は 全体の3割程度 にとどまることが多いと感じています。
成約の決定要因の大部分は、言うまでもなく商品の魅力そのものです。 商品力が弱ければ、どれほど営業が努力しても勝負は厳しくなります。逆に商品力が強ければ、営業担当者はその価値を確実に届ける役割を果たすことが求められます。
営業担当者の貢献は“限定的”ですが、その限定された部分を確実に積み上げることこそが、成果の再現性を高める鍵になります。
4. 営業担当者の貢献は限られるが…
たとえ、営業担当者の貢献がせいぜい3割程度だとしても、その3割部分を継続的に確実に積み上げられるのであれば、その価値は決して小さくはありません。商品の競争力はあくまで必要条件にすぎず、最後の営業担当者の仕掛けこそが、成約を左右する決定要因になるからです。
しかし、その3割部分を毎回確実にすることは、実際には容易ではないのです。営業成果は、商品力、ブランド力、市場環境、顧客の状況、競合の動きなど、複数の要因が絡み合って決まります。
その中で営業担当者が担える領域は限られていますが、そこで重要なのが、この一連の営業プロセス全体を俯瞰し、その構造を理解し、体系的に取り組みことなのです。
- 今現在、この顧客とのビジネスはどのステージにいるのか
- そのステージで必要なアクションは何か
- 次のステージに向けて直面する課題は何か
私は、これを「営業の構造化アプローチ」と呼び、もう一つのカテゴリーで解説しています。営業プロセスを構造として扱うことで、営業の各ステージで適切な対応を取ることができ、また、どのステージで勝敗が決まったのかという要因分析も可能になります。結果として、この”3割部分”の確度は間違いなく高まります。これは、私自身の経験から強く確信していることです。
営業担当者の貢献は“限られている”のではなく、構造化することで“確実に積み上げられる領域”が明確になる と捉えるべきなのです。
5. まとめ
属人的な勘や経験に頼るのではなく、再現性のあるプロセスとして営業活動全体を設計すること。 これこそが、運任せの営業から脱却し、成果を確実に積み上げるための王道です。
営業成果は、商品力・市場環境・顧客の状況など、営業担当者の努力だけではコントロールできない要因に大きく左右されます。だからこそ、営業担当者が担える“限られた領域”を構造化し、毎回確実に実行することが重要になります。
構造化された営業は、属人的な成功ではなく、誰が担当しても一定の成果を生み出せる“仕組み”へと変わります。
営業は「運」ではなく「構造」で勝つ。 本記事が、あなた自身の営業プロセスを見直し、再現性のある成果を生み出すための一助となれば幸いです。
了
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