苦労して勝ち取った成約(外資系金融では「マンデート」と呼んだりします)ほど、営業担当者の喜びは大きいものです。では、その成約に対する営業担当者の貢献度はどれくらいなのでしょうか? そこで、私が若いころに経験した案件をもとに、改めて、その貢献度を考えてみたいと思います。当時、私は某金融会社(A社)で法人営業を担当していました。
【ケーススタディ】
X社に初めての訪問~プレゼンテーション
上司の指示で、初めてX社に訪問することになり、コールドコールを経てアポイントメントを取得。訪問当日、先方3名と面談が始まり、雑談を交えながら自社紹介を進めました。自社商品の中にX社が調査している商品があったことから、「それにピッタリの旗艦商品があるので、次回は商品担当者を連れ詳細を説明させてほしい」と伝え、次回訪問もスムーズに決まりました。
X社から見事成約を勝ち取る!
翌週、商品担当者とともにX本社を再訪し、プレゼンテーションを実施。質問は2、3程度で、40分ほどで終了。そして1週間後ーーー。X社から「貴社の商品を採用する」と連絡が入りました。上司や同僚からは「おめでとう!」と祝福されましたが、私自身はどこか気恥ずかしさを覚えていました。努力して勝ち取ったというより、単に商品が良かっただけではないかーーー。
次はY社だったが・・・
この実績が評価され、次は大手Y本社の新設部署への売り込みを任されました。X社のときと同様に、コールドコールで訪問し、先方から「現在、探している商品」を探り出し、翌週にプレゼンテーションを実施しました。しかし、今回は違いましたーーー。初回訪問では上席を含む3名が参加していたのに、プレゼンテーション当日は上席は欠席し、部下の2名のみ。その空気の違いは明らかでした。
Y社からは成約できず失敗
翌週、自ら状況確認の連絡を入れるとーーー先方からは「良い商品だが、すでに複数社から同様の提案があり、貴社の商品については、今回は見送るよ」と体よく断られました。

このような経験は誰しもしたことがないでしょうかーーー
X社では簡単に決まったのに、Y社ではうまくいかなかった。何がいけなかったのでしょうか?理由は単純で、X社ではたまたま探していた商品に合致したが、Y本社では、すでに他社商品に決まっていた、ただそれだけの話です。つまり、成否を分けたのは、A社の商品力であって、営業担当者の貢献はほぼゼロ(ちょっと言い過ぎかもしれませんが)。当たるも八卦当たらぬも八卦、つまり、この営業のやり方では、結果は「運」に左右されるだけです。
では、仮に私が営業担当者として「やるべきことをやった」としましょう。しかし、どこまでがA社のブランド力・商品力で、どこからが営業担当者の貢献なのでしょうか。もちろん、正解はなく、多くの要素によって変わってくるわけですが、法人営業の現場感覚としては、営業担当者による貢献は、それでも3割程度ではないでしょうか。なぜなら、法人による購買は、個人の好みではなく、社内プロセスを経て決まるのが一般的だからです。どれだけ担当者同士が懇意になっても、商品に魅力がなければ決まらない。
そう考えると、営業担当者の役割の占める割合は大きくないというのはうなずけるのではないでしょうか。とはいえ、たとえその貢献が3割程度だとしても、その3割が決定打になるのであれば、その割合は決して小さくはありません。つまり、商品の競争力は必要条件にすぎず、最後の営業担当者の仕掛けが重要なのです。しかし、その3割部分を確実にすることは、実は容易ではないのです。
だからこそ重要なのは、この一連の営業プロセス全体を俯瞰し、その構造を理解し、体系的に取り組みことなのです。そうすることで3割部分の確度は間違いなく高まりますと、私は信じています。属人的な勘や経験に頼るのではなく、プロセスを構造として扱い、再現性を持たせる。 これこそが、運任せの営業から脱却し、 確実に成果を積み上げるための王道なのです。


