営業目標、営業計画、そして営業戦略──。 この3つがいつの間にかごちゃまぜになっていませんか。
「いやいや、さすがにそれくらいわかるよ」という方、それ、本当ですか?
営業に携わる人なら誰もが一度は「営業戦略を策定せよ」という場面に直面します。チームであれ担当者個人であれ、営業戦略は今や必要不可欠なものとして扱われています。しかし、「それって、本当に“戦略”なの?」というケースも珍しくありません。
1. 営業目標・営業戦略・営業計画の違い
営業目標、営業戦略、営業計画、この3つの言葉を無自覚に使っているケースが多いのではないでしょうか。私の経験でも、「戦略会議」と称した会議が頻繁に実施されていても、議論(というよりも報告)している内容は、営業計画だったり、単なる営業目標だったりすることも珍しくありませんでした。
では、営業目標、営業計画、営業戦略、この3つはどのように異なるのでしょうか?
>営業目標<
営業組織や営業担当者が、一定の期間内に達成すべき具体的な成果やゴール
>営業戦略<
営業目標を達成するための方針や方向性の全体像であり、進むべき道筋を定めたもの
>営業計画<
営業戦略を具体的な行動や数値に落とし込んだ実行スケジュール
営業戦略については後ほど詳細を説明するとして、営業目標と営業計画の例を次に挙げてみました。
- 営業目標: 半期で新規契約を〇社の獲得、今年度の契約金額〇〇億円の達成など
- 営業計画: 新規顧客を月平均〇〇社訪問、プレゼンテーション数を最低でも〇件/月実施
営業戦略会議で多くみられるのは、営業目標と営業計画がセットになって報告されるケースです。内容が具体的で、一見すると完成度が高そうに見えるのですが、実は、突っ込みどころ満載の報告なのです。
「なぜ、そのような営業計画に至ったのか?」「その計画はどのような方針の下で決定されたものか?」
「計画がうまく行かなかったときはどうするの?」
本記事の対象である「営業戦略」の詳細は後述しますが、簡単に言えば、「営業目標の達成に向けて、対象となる顧客セグメントと販路(チャネル)、対象とする商品と差別化方針、そして投入するリソースなどを明らかにし、進むべきルートやロードマップを明らかにすること」です。
一方、その道筋を日々の行動や数値にまで落とし込んだ具体化なスケジュールが営業計画であり、両者の役割はまったく別物です。営業戦略なくして、営業計画はありません。
2. 営業戦略の構成要素|5つのファクター
さて、この営業戦略についても、「構造化」の考えのもとに分解していきましょう。戦略の構造化といっても、難しく考える必要はまったくありません。自分がある目標に向かって何らかの行動を始めようとしたときに歩む道筋を思い描いてみればよいのです。おそらく、5つのファクター(項目)に集約されると思います。
営業戦略を構成する5つのファクター(項目)
- 営業目標:短期・中期に達成すべき具体的な目標は何か
- 現状とのギャップ:目標と現在の状況を比較し、どのようなギャップが存在しているのか
- 障壁と課題:ギャップを埋めるにあたって見込まれる障壁と課題は何か
- 解決法と優先順位:障壁や課題への解決法と優先度が高いものはどれか
- ロードマップ:どのようなリソース配分、時間軸で、どのようなルートを進むのか
このように目標までの道のりを幾つかの構成要素(ファクター)に分解して、それぞれの項目の中で思考を働かせるのも「構造化」の考えの一つです。
それでは、営業活動の根幹を成す「営業戦略」の作り方について、私なりの方法論を解説していきます!
3. 営業戦略の作り方|5つのステップ
「営業戦略の策定」というテーマは営業現場に直結する内容であり、少々難易度が高く、扱う領域も広範です。 そこで、ここでは深入りしすぎず、私の営業戦略の作り方をシンプルに紹介したいと思います。
私なりの営業戦略の作り方を説明する前に、その前提となる、私自身が捉える営業戦略の定義を以下に示します。
営業戦略とは…
組織の目標と具体的な施策(アクションプラン)を一気通貫で結びつける道筋
目標設定 → 現状把握 → 課題検証 → 施策選択 → ロードマップ作成
戦略が機能するためには、目標から施策までを首尾一貫した流れとして整理し、論理的に積み上げていく必要があります。目標と施策の間のプロセスは幾つものステップで構成されていますので、それらを順番に整理し、それぞれの役割と目的を明確にすることが欠かせません。上で解説した5つのファクターに対応する5つのステップの流れは以下の通りです。
▼ ステップ1:営業目標の設定
- 短期・長期を問わず、具体的で実行可能な全体目標を定めます。
- 壮大な夢や願望ではなく、現実に落とし込めるレベルで定義します。
▼ ステップ2:現状の把握
- 目標に対して”現状”を正確に理解する必要があります。
- 目標と現状のギャップを埋めることが戦略の要諦になります。
▼ ステップ3:課題・障害の抽出と検証
- 目標が達成するためには、必ずその達成を阻む”課題や障害”が存在するはずです。戦略を立案するときには、その課題・障害物を徹底的に洗い出す作業が極めて重要になります。
- 課題を抽出する際には、リソース不足、ステークホルダー間の利害の衝突、外部環境の変化や競合他社の存在など、さまざまな角度から分析します。
- 課題が多い場合はカテゴリー化して扱いやすくすると効果的です。
▼ ステップ4:解決策の選択
- 抽出した課題に対して、どのような施策を講じるかを決定します。
- 一つの課題に対して”複数”の解決策や対策を考えます。解決方法は、実行可能性や期待される効果、コストなど、できるだけ異なる視点から考えてみます。
- 各施策について、実施時期、重要性や緊急性、インパクトの大きさ等を考慮し、どれから着手すべきかの”優先順位”を決めます。
▼ ステップ5:ロードマップの作成
- 最後に優先順位に基づき、時系列の「ロードマップ(行動計画)」を作成します。
- 解決策の実行に時間を要するものであれば、期限を数年先に設定したり、緊急性の高い施策は即時に着手する配置をします。
これらのステップを踏むことで、目標設定 → 現状把握 → 課題検証 → 施策選定 → ロードマップ作成 の一貫した構造が形成されます。 これが営業戦略の「構造」です。この構造こそが、営業戦略を「再現可能な仕組み」として機能させる鍵です。
これを図に表すとこのようになります。

4. 戦略策定に共通する思考プロセス
戦略に関する書籍は巷に数多く出版されています。この状況を私は「戦略インフレ」と呼んでいます(笑)。私もかなりの数の内外書籍に目を通しました。
その結果、私が辿り着いた結論は、どんな戦略であっても、この記事で紹介した思考プロセス(5つのファクターと5つのステップ)に集約されるということでした。
一見すると、単純化されているように見えるかもしれませんが、これが戦略の骨子であり、あとは皆さん自身の業態や環境に応じて膨らませていけばよいでしょう。
別のカテゴリーでシリーズでお伝えしている「思考する営業✖構造化」も、基本的には同様の考え方と思考プロセスがもとになっています。
5. まとめ
巷間、「戦略」という言葉が溢れていますが、自分なりの戦略を持つことによりブレない営業活動が可能となり、安定した営業成績を達成することができます。
本記事の要約
- 営業目標、営業戦略、営業計画を混同せず、しっかりと戦略を構築することが安定した営業成績の達成には不可欠
- 営業戦略は、「組織の目標と具体的なアクションプランを一気通貫で結びつける道筋」をつけることであり、具体的には5つのファクターと、それに対応する5つのステップで成り立っている。
- 具体的な実行可能な目標は何か
- 目標に対して現在はどのような状況か
- 目標と現状のギャップを埋めるにあたっての課題・障壁は何か
- その課題を解決する方法は何か、優先度の高い解決法はどれか
- それらの解決策をどのようなスケジュールで進めていくのか
- 営業戦略を複数の項目で構成させるという意味で、この営業戦略の策定も「構造化された営業」のひとつ。
漠然と営業戦略を考えるのではなく、本記事で紹介した流れとプロセスに沿って構造的に整理することが重要です。 この手順を踏むことで、戦略は単なる思いつきや願望ではなく、再現性のある“仕組み”として機能し始めます。
戦略を策定することは、「可視化」や「言語化」にも直結します。 目標設定、現状把握、課題検証、施策選定、ロードマップ作成が一貫した形でつながることで、戦略の説得力が大きく高まり、組織内での合意形成や実行の推進力も格段に強くなります。
営業戦略は、 正しいステップを踏めば、誰でも一定の質で戦略を設計できるようになります。 本記事が、あなたの営業戦略を「構造として捉える」きっかけとなり、日々の営業活動をより強固なものにする一助となれば幸いです。





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